【論説】新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大で日本経済は急下降の瀬戸際にある。政府は当面、2019年度予算の予備費2700億円を活用したり、金融機関の融資を増やしたりする方策を打ち出しているが、第2弾、第3弾の対策を早急にまとめる必要がある。

 感染拡大の直撃を受け、日本経済の現状はひときわ深刻の度を増している。昨年10月の消費税増税で国内総生産(GDP)の5割以上を占める個人消費が冷え込み、10~12月期のGDP成長率は年率換算でマイナス6・3%に落ち込んだ。加えて、新型肺炎の影響は大きく、1~3月期もマイナス成長が続くのは必至の情勢だ。20年の年間でも9年ぶりのマイナス成長に転じるとの見方もある。

 2月の国内新車販売台数は前年同期比10・3%と大きく落ち込んでいる。日本旅館協会によると、3~5月の予約人数はキャンセルが相次ぎ、前年同期比45・2%減となっている。福井商工会議所が先月中旬に行った県内主要企業などへの緊急アンケートでも4割近くが今後「影響がある」と回答している。その後、政府によるイベント自粛や小中高校などへの休校要請もあり、実害が出ている企業も少なくないはずだ。

 自粛の影響はテーマパークやイベント業者のみならず、鉄道やバス・タクシー、飲食業者、土産店などさまざまな業種に及んでいるという。学校の休校では給食業者、酪農家などにも影響が出ている。民間研究機関は自粛などによる個人消費の抑制が東日本大震災の2・6兆円を上回る3・8兆円と試算している。

 中国国内のサプライチェーン(部品の調達・供給)の混乱で日本を含め海外の製造業が工場の操業停止や縮小に追い込まれるケースも多く、自国内で新型肺炎の感染が拡大するにつれて経済への直接的な影響も出始めている。今や新型肺炎は世界経済の最大のリスク要因といえる。対応次第で世界経済は大きく下振れする恐れが否めない。

 懸念されるのはアップルやマイクロソフトが業績見通しを下方修正するなど、米国経済への悪影響が表面化している点だ。米連邦準備制度理事会(FRB)は緊急利下げしたものの、パウエル議長が記者会見で、中央銀行による対応の限界を認めたことなどで売りが強まり、下げ止まるどころか大幅安となった。

 東京株式市場は日銀による国債と上場投資信託(ETF)の買い入れでしのいだが、異次元緩和を続けてきた日銀の余力は乏しい。政府は国民の命と健康を守る一方、国民の暮らし、なりわいの維持にも注力する必要がある。「緩やかに回復している」との景気判断をまずは修正すべきだ。

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