東京マラソンの男子で、2時間5分29秒の日本新記録をマークして4位に入った大迫傑。東京五輪代表入りを有力にした=東京都千代田区

 今年の東京マラソンは、日本のマラソンの歴史から見て、歴史的な大会だったかもしれない。

 大迫傑(ナイキ)が、自身の日本記録を21秒更新する2時間5分29秒で日本人トップの4位に入り、東京オリンピックの代表に大きく近づいたことだけではなく、全体のレベルが大きく上がったのである。2時間6分台に突入したのはこの二人だ。

・高久龍(ヤクルト)2時間6分45秒

・上門大祐(大塚製薬)2時間6分54秒

 そして、2時間7分台は7人を数えた。

・定方俊樹(MHPS)2時間7分5秒

・木村 慎(ホンダ)2時間7分20秒

・小椋裕介(ヤクルト)2時間7分23秒

・下田裕太(GMO)2時間7分27秒

・菊池賢人(コニカミノルタ)2時間7分31秒

・一色恭志(GMO)2時間7分39秒

・設楽悠太(ホンダ)2時間7分45秒

 つまり、2時間7分台以内の選手が10人いたことになる。今回、優勝に絡めずに「完敗」した感の強い設楽でさえ、2時間7分台で走っている。

 4年前、リオデジャネイロ・オリンピックの代表権がかかった東京マラソンでの日本人トップは、高宮祐樹(ヤクルト)の2時間10分57秒。日本人2位は当時、青山学院大の学生だった下田で2時間11分34秒、3位は同じく青学大の一色で2時間11分45秒だった。

 この4年間で、どれだけ日本のマラソン界が進化したかが分かる。

 躍進を支えた理由は二つあると見る。

 一つは、日本陸連が「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」という枠組みを作ったことで目標が明確になり、現場での士気が大きく上がった。

 統括団体のマネジメントが強化に寄与したことは大いに評価したい。

 そしてもう一つは、いわゆる「厚底シューズ」と呼ばれるナイキの「ヴェイパーフライ」の登場によって、技術革新が選手たちの能力を引き出す役目を果たした。

 今後はカーボンプレートが内蔵されたシューズがプラットホームになり、シューズによる差異はなくなってくる。東京オリンピック以降もハイレベルな争いが続くことになるだろう。

 今回、自己ベストとなる2時間7分台をマークし、日本人6位でゴールした青学大OBの小椋は、こう話す。

 「2時間8分台を目指していたので、自分としては上出来なはずなんですが…。うれしさ3割、悔しさ7割というところでしょうか。これからは2時間6分台を出さないと、代表争いには絡めないということですね。今回の東京マラソンが、自分にとってのマラソンの第一歩だと思っています」

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で一般ランナーの参加が見送られ、大会の質が不安視された東京マラソンだったが、各選手たちがハイレベルな走りを見せたことで、大いに盛り上がった。

 日本の男子マラソン界は、新しい時代を迎えつつある。

生島 淳(いくしま・じゅん)プロフィル

1967年、宮城県気仙沼市生まれ。早大を卒業後広告代理店に勤務し、99年にスポーツライターとして独立。五輪、ラグビー、駅伝など国内外のスポーツを幅広く取材。米プロスポーツにも精通し、テレビ番組のキャスターも務める。黒田博樹ら元大リーガーの本の構成も手がけている。

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