岡倉天心の著書「茶の本」の初版本。奥の2冊は他の代表作「日本の覚醒」と「東洋の理想」=福井市の福井県立美術館

 明治時代に活躍した福井県ゆかりの美術指導者、岡倉天心の著書「茶の本」は、1906年に米ニューヨークの出版社から刊行された。日露戦争によって欧米各国で日本への関心が高まる中、茶の湯に凝縮された日本の精神を世界に向けて英語で伝えた。

 福井市の福井県立美術館には、「茶の本」出版100周年記念の特別展示を控えて2005年に購入した初版本が保管されている。「人情の碗」「茶の流派」「道教と禅道」「茶室」「芸術鑑賞」「花」「茶の宗匠たち」の計7章構成で160ページ。傷や染みを帯びながらも保存状態が保たれた緑の表紙には、天心が米国で名乗っていた本名「OKAKURA―KAKUZO」(覚三)と刻まれている。

 洗練された思想表現が高く評価され、米国で反響が広がった後にイタリア語やドイツ語など約10の言語に翻訳された。県立こども歴史文化館は初版本のほか、さまざまな装丁の各国の翻訳本100冊以上を所蔵。東洋を理解するための普遍的な書物として、今も広く読み継がれている名著だ。

 天心は父親が福井藩出身で、横浜生まれでありながら、自身を「福井の武家の出身」と称したと伝わり、福井への深い思いを抱いていたとされる。「茶の本」で表現した自然と人間の調和を、福井に見ていたのかもしれない。

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