クマやシカなどに皮を剥がれた杉の木=福井県池田町東角間

 自然に恵まれ、野生動物と“共存”していた福井県池田町でも近年、獣害が深刻化している。被害防止へ町民が狩猟資格を取り、自分の農地は自分で守ろうという動きも出始めたほか、仕留めた野生動物を解体・試食する体験教室は定員の倍以上の申し込みがあるなど、ジビエとして利用しようという動きも町内で広がりつつある。

 ■ここ5年、年々深刻

 「特にここ5年は、年々被害がひどくなっている」。クマやシカが樹液を求めて杉の皮をはいで木が枯れる被害が相次ぎ、町森林組合では幹に防護用ネットを張るなどの対策に追われている。70代の農業主は「畑に電気柵を設置しても飛び越えられるなどで効果が薄く、被害は減らないのが現状」と肩を落とす。

 町によると前季の冬が暖かく、弱って死ぬ「自然死」が減少、本年度は全体の頭数が増加傾向にある。

 ■猟友会に新たに4人

 獣害対策への理解を深めようと、町では2年前から、狩猟資格を持つ職員の岡村祐さん(35)が被害のあった集落に出向き、わなでの捕獲から埋却までを実演してみせる活動に取り組んできた。岡村さんは「実演を見て、山や畑を守るため自分で狩猟資格を取る人が出始めた」と話す。

 県猟友会によると、会員数はほぼ横ばいだが、池田支部では本年度新たに4人が加わり約30人となった。割谷に山林を所有する男性(68)は昨年猟友会員になり、初年度で約30頭のイノシシやシカを捕獲した。「山を守る親の姿を見て育った者として、獣害で壊れる山を見捨てられん」と話す。池田支部の本年度の捕獲数は1月末時点でシカ376頭、イノシシ194頭を捕獲と、いずれも前年度を100以上上回っている。

 ■解体講座に2倍以上

 駆除だけでなく、仕留めたイノシシやシカをジビエ料理として活用する動きも町内で広まってきた。いけだ農村観光協会が3年前から開いているイノシシやシカの解体・試食体験講座は定員の2倍以上の申し込みがあり、キャンセル待ちとなっている。イノシシの串焼きやシカ肉コロッケを製造販売する男性(34)は春からはシカ肉のミンチカツを新しく加える予定だという。

 ■役割分担し負担減に

 獣害駆除は仕留めた個体を山に埋めるまでの作業となり、時には1体で100キロを超すような大型個体の処理もある。高齢化による獣害対策の重負担、個体の埋却地の不足など課題も多い。

 岡村さんは「自分の畑や山は自分で守る、という意識が芽生えてきたことは大きな意義がある。その意識を町全体に広げていきたい」と話す。

 捕獲―ジビエ活用というように、駆除の役割を町内で分担できる体制がさらに進めば、産業として確立する道も広がる。生まれ始めた個人の動きををつなぐネットワーク化が、持続可能な獣害対策につながる。

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