映画「パラサイト 半地下の家族」の上映前に多くの観客でにぎわうロビー=2月20日、福井県福井市のメトロ劇場

 福井県福井市の老舗映画館「メトロ劇場」が福井県内でいち早く、アジア映画初の米アカデミー賞作品賞に輝いた韓国映画「パラサイト 半地下の家族」を上映し、注目を集めている。1年近く前から作品に着目し配給元に働き掛けた結果、タイムリーな上映が実現し、平日の日中に整理券を出すほどの人気となっている。ミニシアターの面目躍如といえる盛況ぶりに古参スタッフは「映画が貴重な娯楽だった黄金時代を思い出すにぎわい」と目を細めている。

 劇場は同市の繁華街・通称「片町」の商業ビル4階にあり、定員117人でスクリーンは一つ。1953年に開館し、年間約150の単館系作品を上映している。

 良質な作品にこだわった3代目館主の根岸義明さんが、来館者アンケートなどを基に多様な映画を扱う独自路線を貫き、熱心なファンに支えられてきた。根岸さんは2016年に急逝したが、長女の佳代さん(46)=神奈川県=が支配人となって作品選定を引き継ぎ、吟味して上映作を決めている。

 「パラサイト」上映を巡っては19年春から配給元に働き掛け、年末に正式決定。県内で唯一、アカデミー賞発表から間もない2月15日に上映を始めた。「昨秋の試写で良さを確信した。小さな館でも上映させてもらえてうれしい」と佳代さん。当初は一日1回上映の予定だったが、臨機応変に対応できる強みを生かし、一日3回に変更した。

 ロビーには手書きの解説ボードがあり、入場券は対面で販売、劇場内には昔ながらの椅子が並ぶ“昭和感”も健在だ。義明さんの長男で4代目館主の輝尚さん(43)は「うれしい悲鳴。お客さん同士が肩寄せ合う距離で、喜怒哀楽を共有してもらいたい」と話す。

 4部門でオスカーを獲得した「パラサイト」は、半地下の部屋で暮らす貧しい一家が、裕福なIT企業の社長宅に入り込む物語。20日午後1時からの回も2時間前に整理券を配り、上映直前にはロビーと階段に長い列ができた。友人と鑑賞した女性(37)=福井市=は「何が幸せか考えさせられる映画だった」と興奮気味に話していた。

 上映時間は同劇場ホームページで。21日には鯖江アレックスシネマ(鯖江市)でも上映が始まり、敦賀アレックスシネマ(敦賀市)では3月27日から上映される予定。

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