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 初長編『ヘレディタリー/継承』が絶賛されたアリ・アスター監督の第2作だ。終始不穏な気配が漂っていた前作から一転、陽光まぶしく緑豊かな真夏のスウェーデンのコミューンが舞台となっている。大学で民俗学を研究する恋人やその友人たちと、白夜が続くスウェーデンの奥地を訪れたヒロインが、90年に一度開かれる想像を絶する“祝祭”を体験する…。

 これをホラー映画と呼ぶべきか否かはさておき、ホラーというジャンルには、例えば『ゾンビ』が大量消費社会に対する警鐘だったように、特殊な設定に仮借することで社会問題や人間の本質を顕在化させやすいという特長がある。そのことに自覚的なこの天才監督は、美しさもグロテスクさも際立たせるホラーならではの過剰な演出で、観る者の感情を完全に支配していく。我々に、次はこうなるのではないかと予測させて、その通りになっていく不安を積み上げ、骨身にまで恐怖を沁み込ませていく。

 そして、そこから浮かび上がるのは、男と女の相性や結び付きをめぐる普遍的な真理であり、目では見られない人間の深層心理。カルト教団が孕む特殊な事例は、表層に過ぎないのだ。まるでカフカの虚構的策略とレヴィ=ストロースのフィールドワークが融合したような映像体験で、前作は笑っちゃうほど怖い映画だったが、今度の恐怖はむしろ感動的ですらある。★★★★★(外山真也)

監督・脚本:アリ・アスター

出演:フローレンス・ピュー、ジャック・レイナー

2月21日(金)から全国公開

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