【越山若水】世界各地で猛威を振るう中国発の感染症・新型コロナウイルスによる肺炎に名前が付いた。「COVID(コビッド)-19」。風評被害などに配慮して「武漢」の呼称は回避された▼正式名称が決まって、次は感染予防策や治療方法の確立、ワクチンの早期開発に期待したい。一朝一夕にはいかないだろうが、いま世界中が「コビッド」の不安と恐怖におののき、日本でも中国からの帰国者やクルーズ船の乗客の対応に四苦八苦しているのが現状だ▼チャーター機の帰還では隔離が徹底されず、検査を拒否した人や個人的な事情で自宅に戻った人も多い。クルーズ船では乗客を缶詰め状態にしたものの、ウイルス検査は遅々として、船室で自己管理を促すばかり。全てが後手に回り集団感染の拡大を許してしまった▼哲学者の鷲田清一さんは著書「『ぐずぐず』の理由」(角川選書)で、オノマトペ(擬態語)について考察をしている。まず「ぎりぎり」。これを超えると全てが瓦解(がかい)してしまう臨界点のこと。抜き差しならぬ気配、追い詰められ絶壁に爪先立っている感覚だという▼続いて「ぐずぐず」。決断がつかず決着を引き延ばし、やがて流されていく。それでも焦らず、ひと言「愚図(ぐず)」と呼び捨てにしたいと書く。終わりの見えないコビッド災禍に、日本政府の「きびきび」した措置を望むが、内心は「どきどき」である。

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