【論説】古くは万葉集にも存在がうかがえる南越前町の今庄宿を、国の重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)にという動きが高まってきた。今庄宿は、江戸時代に形成されたまちの区割りが良好に残り、文化的価値は高いとされる。住民有志団体による調査・保全や観光ボランティアの活動も奏功し、近年は観光客も増えてきている。今庄宿の歴史的価値を改めて周知し、保存から活用、振興へと明確なビジョンを町と町民が共有し機運を盛り上げ、県内3例目となる重伝建選定を実現させたい。

 選定を目指すのは、今庄地区の旧北国街道約1キロ区間に沿う約9ヘクタール区域で、約340棟の建物がある。街道の幅や形状は伝統的な姿をとどめ、江戸時代に形成された宿場町の区割りがほぼそのまま残っているほか、江戸時代の町屋も8棟現存するなど、文化的な価値は高いとされている。

 重伝建に選定されれば、区域内の1964年以前に建築された建造物で所有者が選定に同意した建物は「伝統的建造物」(伝建物)として、基準に基づいた外観の修繕や改修が補助されるほか、固定資産税の減免などの措置がとられる。65年以降の建物にも補助がある。

 伝建物に選定されても、建物内部の改装は原則自由に行えるため、例えば古民家を活用して物販や飲食などの出店が可能という。今庄宿でも近年、街並みの食べ歩きを楽しんでもらおうと、町や観光連盟が働きかけ、酒蔵や商店が食と地酒などを提供し、人気を集めている。

 町によると今庄地区全体で約600戸があり、うち空き家が約50戸。重伝建の選定申請には住民の同意も要件となっており、町では現在の住民に加え、町外や県外に住む家主の意思確認に取り組んでいくことになる。既に指定を受けている熊川宿では、140戸のうち空き家は約40戸。その空き家を新店舗出店の受け入れ先候補とプラスにとらえ、区やまちづくり特別委が町と連携し、空き家の賃貸や購入を希望する人との窓口を務めているという。

 今庄宿では宿場町の歴史や文化、建物の構造を調査・提言、保存活動に取り組んできた「今庄旅籠(はたご)塾」、「今庄宿と都をつないだ街道の探査・保全に取り組む万葉の道辺を探る会」など熱心な住民活動という下地がある。観光ボランティアもバスのツアー客の案内に取り組んでいる。これら住民の熱意を生かし、早ければ年内を目指すという選定申請へ、機運の盛り上がりに努めたい。

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