【越山若水】マラソン選手のアベベ。エチオピアの軍人だった。ローマ五輪で優勝したが、レース前は無名だった。その名を一躍世界にとどろかせたのは優勝ではなくはだしのランナーとしてだった▼次の1964年の東京五輪でも注目を集め連覇したが期待のはだしではなかった。再び巡ってくる東京五輪。開催まで半年を切った中で、やきもきさせられたのが厚底靴。世界陸連が条件付きで容認し一件落着をみた▼世界のトップ選手にとどまらず箱根駅伝では多くのランナーが履き、好記録が相次いだことは記憶に新しい。県内のスポーツ店でも売れ行きが好調だといわれている▼米スポーツ用品大手ナイキの製品。アスリート向けのモデルは厚底に炭素繊維のプレートを挟み込み、高いクッション性と反発力を実現。陸上界では「長距離走は軽くて薄底」が主流だった常識を覆したと評価される一方「やり過ぎでは」と競技への影響の大きさに疑問の声もあった▼過去には競泳の「高速水着」などハイテク用品が議論を呼んだ。用品の技術革新と競技の公平性とのバランスが改めて問われている。五輪に向けた新たなモデルは次々と登場、ランナーの足元は一層注目されそう。だが、ハーフマラソンで日本記録をつくった新谷仁美さんはいう。「走るのは私の足でシューズではない」。選手の競技にかける至純な思いを忘れてはならない。

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