【越山若水】尿一滴でがんの有無が簡単で、しかも安価に分かる検査技術が開発され、九州の一部自治体が運用試験の協力に乗り出したという。がんの早期発見に適しているのではと期待が集まっているようだ▼がんは日本人の死亡原因の1位。2人に1人がかかる時代ながら、内閣府調査では「受ける時間がない」「健康に自信がある」などを理由にがん検診を受けない人が多い。日本医師会がOECD調査から引用したデータでの乳がん、子宮頸(けい)がん検診で比較すると、日本はほぼ40%にとどまり、米国80%台、英国70%台には遠く及ばない▼検査受診の低迷をにらみ、東京でベンチャー企業を立ち上げた広津崇亮(たかあき)さんが20年来の研究から検査方法を見いだした。自著の「がん検診は、線虫のしごと」(光文社新書)のタイトルにもあるように、体長1ミリほどで目がない線虫。鋭敏な嗅覚を持ち、がん患者の尿には近づき、健常者の尿からは遠ざかる習性を利用した▼15種類のがんに反応。がんが「ある」か「ない」かは約85%の精度で見つけることができるとか。費用も約1万円のためがん検診前の「1次スクリーニング」とし検査の受診を促したいという。現状では部位まで判明せず、今後は部位の特定を目指す▼医療の世界で手付かずだった生物診断の可能性を示した。実用化に向けがん検査の活用法についても熟議を重ねてほしい。

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