【越山若水】外国人が不思議に思う日本の習慣の一つに、家に入るとき「靴を脱ぐ」ことがある。高温多湿の気候のせいもあるが、最大の理由は「床に座る」という身体文化が深く関係している▼椅子を使用する外国人とは異なり、床に座って居場所を定めるときに履物は邪魔になる。鼻緒をつま先で引っかける草履やゲタも、着脱するのに便利だから、生活の必然として誕生した。加えて座るという文化が、日本人の立ち居振る舞いにも強い影響を与えている▼座り方もいろいろある。古くは天皇も大臣も胡坐(あぐら)が主流で、片膝立ての場合もみられた。仏像は座禅と同じ結跏趺坐(けっかふざ)が一般的だ。江戸時代に武家の礼法となった正座は格式張って堅苦しい。だから正座ではなく、胡坐のように足を崩した楽な座り方を「安座」と呼ぶ▼さて、通常国会序盤の論戦を聞いて感じたことがある。降って湧いた新型肺炎の猛威も気になったが、昨年来の「桜を見る会」の疑問に安倍晋三首相がどう答弁するか注視していた。各社の世論調査でも70%前後が首相説明に「納得できない」と回答していたからだ▼野党の追及を受けても、首相は従来の説明の繰り返し。逆に声を荒らげる場面もあった。適当に受け流し逃げ切る算段に思える。確かに永田町の勢力は「1強多弱」である。だがそこに胡坐をかいて、安座を決め込む姿勢を国民は快く思うだろうか。

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