【論説】中国を発生源とする新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大が日増しに加速している。中国経済は米中貿易摩擦などにより減速しており、さらに拍車がかかるのは確実だ。影響は世界経済に及び、とりわけ昨年10月の消費税増税で景気後退感が強い日本にとって大打撃となる可能性がある。国民の命と健康を守ることを最優先とする一方で、経済への影響にも十分備える必要がある。

 中国経済への影響は既に深刻な様相だ。専門家の試算では春節(旧正月)の連休中に人出が大きく減少したことから、飲食や観光、映画といった業種だけで、計1兆元(約16兆円)以上の損失となったとされる。加えて、今年1~3月期の実質国内総生産(GDP)成長率は5%を割り込むとの予測もある。6・0%だった昨年10~12月期を大きく下回ることになり、事態が長引けば、世界経済への打撃となるのは必至だ。

 経済的打撃は、重症急性呼吸器症候群(SARS)が流行した2002~03年を上回るとみるべきだろう。世界のGDPに対する中国の比率は当時4%にすぎず、世界経済への影響は限定的だった。だが、今では16%に達しており、影響は計り知れない。中国政府には新型肺炎の封じ込めに注力するとともに、景気腰折れを防ぐ経済対策にも力を入れるよう求めたい。

 日本への影響も危惧される事態となっている。中国政府が団体旅行の禁止に踏み切るなどしたため、中国からの訪日客が大きく落ち込み、観光地や商業施設などへのインバウンド消費に影を落としている。観光地のホテルでは宿泊予約のキャンセルが相次ぎ、免税売上高が2桁減となった大手百貨店もあるという。日韓関係の悪化で韓国人客が激減したのに加え、中国人客が戻らないとなると、政府が掲げる今年の訪日客目標の4000万人は画餅に帰しかねない。

 日本は中国を最大の貿易相手国としており、中国の消費が減退すれば日本国内の輸出企業は立ちゆかない。部品の輸入が滞ることも想定し、調達先の多様化にも目を向ける必要があるだろう。中国武漢市に進出する自動車メーカーなどは封鎖により操業の見通しが立たないままだ。

 気がかりなのは、新型肺炎の拡大の収束が見通せないことだ。日本経済は消費税増税で個人消費が冷え込み、昨年10~12月期はマイナス成長となったとみられている。1~3月期は回復基調が期待されたが、新型肺炎という新たなリスクに見舞われ、にわかに不透明感が増している。政府、日銀は経済への目配せを欠かすことなく、状況に応じて機動的に政策を発動しなければならない。

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