【越山若水】日本最古の通貨は「和同開珎(わどうかいちん)」だと学校で教わった。708年に現在の埼玉県秩父市で天然銅が発見され、元号が「和銅」に変更。中国・唐の「開元通宝」を手本に鋳造されたという▼ところが近年、通説を覆す“幻の通貨”が数多く発見された。「富本銭(ふほんせん)」である。昭和以降に何カ所かで1枚ずつ見つかり存在は知られていた。ただ平成になって奈良県明日香村の工房遺跡から一度に33点が出土した。地層の年代から和同開珎より古いと認定された▼さらに「日本書紀」の683年の記述が後ろ盾となった。「今より以後、必ず銅銭を用いよ。銀銭を用いることなかれ」。銅銭とは富本銭で、銀銭とは「無文(むもん)銀銭」を指す。それなら無文銀銭が最古では…と思うだろうが、律令国家の正式な通貨ではなかったらしい▼歴史学者、小和田哲男さんの記述を参考にしたが、貨幣と流通の関係は何とも複雑だ。いま注目を集めるデジタル通貨も同じだろう。米交流サイト・フェイスブックが計画する「リブラ」や中国が発行を目指す「デジタル人民元」に、主要先進国が警戒を強めている▼素人で不案内だが、国際金融システムの混乱のほか、サイバー攻撃やマネーロンダリングの危険性、各国の金融政策の無力化など不安は多い。特に日本は現金志向が強く、キャッシュレス化の対応も遅れ気味。舵(かじ)取りに抜かりがあってはならない。

関連記事