【越山若水】紀貫之が立春に詠んだ歌が古今和歌集にある。「袖(そで)ひちてむすびし水のこほれるを春立つけふの風やとくらむ」。夏から秋、冬、そして春と1年の時の流れを31文字に織り込み表現している▼昨夏から振り返ってみると猛暑に相次ぐ台風の襲来、秋らしさを素通りし記録的な1月の暖冬。貫之が詠んだ季節の移ろいを体感できずじまいだったように思える。立春を迎えては中国武漢発の新型肺炎。日々拡大する情報に接し、春への淡い期待もかすみそうだ▼そうした中、県内の店頭ではマスクが品薄か品切れ状態らしい。元々、この時期はインフルエンザの流行と、花粉の飛散もあって街ではマスク姿が目立ってくる。その多くは予防対策といわれ、その上に新型肺炎。感染予防にと買い求めているためだが、中国人客によるまとめ買いもあるようだ▼家庭用マスクの輸入も含めた生産量は2017年時点では、40億枚以上(日衛連調べ)。国民1人当たりに換算すると年間30枚程度になる。目下、日用品大手のメーカーは受注の急増を受け、国内工場では24時間フル操業で増産に当たっている▼先般、県庁ではマスクの着用や手洗いの正しい方法などの周知を確認している。マスクは口と鼻を完全に隠し空気の漏れがないか。外す際は必ずひもを持つなどを徹底する。マスクを買い求めただけで過信せず、なお冷静に対処したい。

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