中国・武漢市で発生した肺炎の原因とされる新型のコロナウイルスの電子顕微鏡写真(中国疾病予防コントロールセンター、GISAID提供)

 世界保健機関(WHO)は1月30日、新型コロナウイルスによる肺炎を巡る3回目の緊急委員会を開催し、協議終了後にテドロスWHO事務局長が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」に該当すると宣言した。今後、検疫態勢の充実など感染拡大防止に向けた国際的な協力が一層強化される。

 テドロス氏は記者会見で「渡航や交易を制限する理由は見当たらない」と述べ、WHOとして渡航制限勧告は見合わせると表明。「保健制度が整っていない国へウイルスが広がることが最大の懸案」として「感染拡大を防ぐために、一致団結して行動する時だ」と強調した。これまでの緊急委では意見が二分されていたが、フサン委員長は今回、ほぼ全会一致で宣言発出の結論に至ったと述べた。

 中国湖北省武漢市が、原因不明の肺炎患者を相次いで確認したと発表してから1カ月。中国全域で感染者数の増加に歯止めがかからず、世界全体の感染者数は計8100人超になった。WHOは緊急事態宣言を出すことで早期終息に向け、各国への注意喚起と取り組みを促す狙いがある。WHO加盟国が拘束される国際保健規則に基づく措置だが、強制力はない。

 WHOによると、人から人への感染は日本を含め中国外でも拡大。テドロス氏は今後、ワクチン開発と治療法の確立や、各国間の情報共有に注力する考えを示した。WHOは22、23両日に新型肺炎を巡る緊急委を開催したが、その時点では中国国外への感染が依然限定的だとして、宣言は「時期尚早」と見送られた。

 2002~03年の重症急性呼吸器症候群(SARS)への対応が遅れたことを受け、05年改定の国際保健規則で新設された緊急事態宣言の制度は、国際的な公衆衛生上の脅威となりうる全ての疾病や事象が対象。これまでに、09年に新型として流行したインフルエンザ、14年に感染拡大したポリオ(小児まひ)、14年と19年のエボラ出血熱、16年の中南米でのジカ熱で出されている。

  ■勝田吉彰・関西福祉大学教授(渡航医学)の話 世界保健機関(WHO)の緊急事態宣言を重く受け止めて、本格的流行を想定した備えを進めるべきだ。日本は水際対策の継続で流行を遅らせることができる。その間に、対策の強化を市町村レベルまで進めておく必要がある。それに加えて、ウイルスを広げる飛沫(ひまつ)感染の予防を徹底し、続けることが大事だ。手洗いやマスクはもちろんだが、ウイルスが付着しやすい手すり、ドアノブの消毒も心掛けてほしい。

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