【越山若水】「動物たちの内なる生活」(早川書房)という本がある。動物の行動をつぶさに見てきたドイツの森林管理官が、豊かな感情や知性に満ちた極めて人間的な一面を取り上げている▼名前が呼ばれるまでじっと待つ礼儀正しいブタ、メンドリを欺いて誘惑するオンドリといった面白いエピソードが幾つも紹介されている。中でも特に興味をそそられたのが、動物にも公正さを求める感覚が備わり、不公平さには反発する態度を示すという事実である▼2匹の犬を座らせ「お手!」と命令する。協力すれば報酬が与えられる。ここで扱いを不公平にしてみる。両方がお手をしても、一方はソーセージ、もう一方にはパンをあげる。あるいはエサをもらえるのは片方だけ。すると差別された犬はいぶかしげな顔を見せる▼不当な扱いを受けた犬はそのうち我慢の限界に達し、指示された動作の協力を拒んだという。ちなみに「両者とも報酬なし」など、ほかと比較できない場合は何も問題がなかった。社会的な集団で生きている限り、人間のみならず動物も公正さの欠如には敏感らしい▼2020年春闘がスタートした。中心のテーマは「格差是正」。労働組合側は中小企業や非正規社員の昇給を目指す。経営側には大企業の「同一労働同一賃金」が4月から適用される。景気の先行きは読めないが、積年の不公平感の悔しさは根が深い。

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