【越山若水】「パンデミック」という聞き慣れない言葉が世間を騒がせたのは2009年のこと。同年の新語・流行語大賞にノミネートされ、トップテンには「新型インフルエンザ」も入っていた▼北米に端を発した変異型のインフルエンザが南米や欧州、アジアなど世界中に蔓延(まんえん)、同年6月に世界保健機関(WHO)は41年ぶりに「パンデミック」を宣言した。「世界的大流行」「感染爆発」と翻訳され、語感も「パニック」に似ていたため何とも不気味だった▼日本政府も国際便で水際作戦の「機内検疫」を実施、病院には「発熱外来」を開設したが、海外から帰国した高校生ら感染者が次々と確認された。何しろ見えないウイルスが相手。しかも過去に猛威を振るったスペイン風邪などを想起させ、不安と恐怖をかき立てた▼新型コロナウイルスによる肺炎が、中国本土から全世界へと拡大している。日本でも感染者が相次ぎ、発生地の武漢市には約560人の邦人が取り残されている。政府は被害防止のため同肺炎を「指定感染症」にする方針で、患者の強制入院や就業制限が可能になる▼国民の動揺を解消すべく万全を期してほしい。ただ09年の新型インフルエンザの場合、「パンデミック」の響きに翻弄(ほんろう)されて「一斉に大騒ぎし、一斉に油断する」危うさも指摘された。政府の情報伝達は分かりやすく、冷静な言葉が不可欠である。

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