【論説】福井県が共有オフィス「ウィーワーク」の会員となり、首都圏のIT関連企業経営者らとのネットワークづくりに乗り出している。会社から遠く離れた場所に住み、インターネットや電話を使って仕事をするリモートワーク(遠隔勤務)に関心の高い企業が多いことから、県内へのサテライトオフィスの誘致につなげたい考えだ。都道府県では例がない取り組みで、その成果が注目される。

 ウィーワークは起業家らが共同で使えるオフィスの賃貸サービス。米国の運営会社が経営難に陥り、筆頭株主のソフトバンクグループが昨年10月に追加支援策を打ち出した一方で、日本法人は12月に東京・渋谷に国内最大規模の拠点をオープンするなど、拡大路線を続けている。

 国内だけで約2万人が登録するというウィーワーク会員専用のSNS(会員制交流サイト)や、各拠点で開かれる交流会などさまざまなイベントに、県が着目。各部局長の権限で事業を試行する「政策トライアル枠予算」を活用し、県として会員登録した。

 サテライトオフィスの誘致について、県東京事務所は「企業を個別に訪問しても、トップに会うのは難しい」と指摘する。ウィーワークの場合、開設に関心のある中小企業のトップや、他企業とのつながりを求める大手企業の社員らが多く集まっていることから、すぐに反応があり、前向きな意見交換ができるのがメリットのようだ。

 県は会員専用のSNSを使い、企業にアプローチしているほか、会員向けの企業誘致セミナーを企画するなど、昨年11月から12月末までに約200社に接触した。このうち1社が鯖江市にオフィスを開設することが決まり、5社が年度内に県内自治体の視察を予定している。会員登録から2カ月間という期間を考えると、まずは順調な滑り出しと言えそう。

 企業誘致やPRのためウィーワークに会員登録している自治体は、市町は静岡市や北海道上士幌町などあるものの、都道府県は福井県だけという。県は県産品のプロモーションや伝統産業とのマッチング、県出身の会員によるグループづくりなどにも取り組む意向。他の都道府県が会員となる前に、サテライトオフィスの誘致以外の分野でも、先行者利益を確保する青写真を描いている。

 首都圏はじめ都市部の企業とネットワークを構築するための、新たなツールとなり得るか。これからの県の取り組みを注視していきたい。

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