【越山若水】幕末の志士橋本左内と越前福井藩が果たした役割について、歴史家で作家の加来耕三さんは「一言でいうならば、“デモクラシー”の本質を日本に植え付けたこと」と、監修した「橋本左内 時代を先取りした男」(福井テレビ取材班編、扶桑社)で解説した▼幕府と倒幕派が対立していた時代。左内は、優秀な人材を登用し「この国を一つの家にする」必要性を訴えた。左内の思想は死後も福井藩の方針として生き続け、明治新政府に影響を与え、現代日本にもつながると加来さんはみる▼その民主主義が世界各地で揺らいでいる。排外主義が台頭し、強い指導者や権威主義に引き寄せられる人々が増えつつある。米トランプ大統領は「自国第一主義」を掲げ、国際協調に背を向ける▼戦後の平和と繁栄を支えてきた民主主義、とりわけ個人の権利を守り、民衆の考えを公共政策へと転換する「リベラル・デモクラシー」が脅威にさらされていると政治学者ヤシャ・モンクさんは著書「民主主義を救え!」(岩波書店)で警鐘を鳴らす▼日本も例外ではない。安倍長期政権は異論を遠ざけ、安易な忖度(そんたく)が政治をゆがめている。「デモクラシーは完成することがない。理想の形を掲げながら、現状でよいのか、もっと良い方法はないのかを問い続けていくのが、本来の世界」と加来さん。もう一度原点に立ち返る必要がありそうだ。

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