【越山若水】「確率が十分に低い事象は決して起こらない」―。フランスの著名な数学者、エミール・ボレルが1940年代に提唱した独自の概念で、今は「ボレルの法則」と呼ばれている▼「そんなことはない!」。早速反論の声が聞こえそうだ。確かに確率が低い出来事でも、頻繁ではないが、実際に起きている。ボレルは自身の意図を古典的な例を持ち出し説明した。「サルがタイプライターをでたらめに叩(たた)いて、シェークスピアの作品ができるか」▼さらに「パリ市民がある日、交通事故で死亡する確率は約100万分の1。それを避けるため、自宅に引きこもるのは滑稽に思えるだろう」と解説。人間の尺度から見て極めて低い確率の事象を期待するのは合理的でないと断じた(「『偶然』の統計学」早川書房)▼案の定というか、立憲民主と国民民主の合流協議が物別れに終わった。安倍1強の政権にくさびを打つ野党勢力の誕生かと期待を持たせておいて、結局は相互不信と溝の深さを露呈しただけ。まさに「ボレルの法則」さながら、ぶざまな結末に有権者の失望感は大きい▼自民党の二階俊博幹事長に至っては、先刻お見通しとばかり、「合流しようが、されないでおられようが、どうぞご自由に」と突き放した。この期に及んでは、国会の議論で存在感を示し名誉挽回するしかない。折しも、政権の攻めどころは満載である。

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