「特殊詐欺は人の愛情につけ込み、気持ちを破壊する犯罪。被害者は自分を責め続ける。経済的被害より精神的苦痛が甚大だ」。こう話すのは、受け子らの国選弁護人を務め被害者との接点も持つ福井弁護士会の内上和博弁護士(55)。同会犯罪被害者支援委員長としての視点も交え、被害者の心境や支援、捜査の課題を語ってもらった。

⇒【特集】詐欺グループの実態迫る「受け子その大罪」

 ―どのような人たちがだまされるのか。

 「家族への愛情が深い高齢者。息子や孫への愛情があるからこそ、『孫が交通事故に遭った』『会社をクビになるから助けて』という架空話を聞くと、助けようとする一心でだまされる。被害者はいずれも、大切な年金を何十年もコツコツためているような、しっかりした人だった」

 ―被害者はどんな苦しみを抱えているのか。

 「受け子らを弁護した際に数百万円の被害に遭った県内の高齢女性2人と示談交渉した。ただ、最初は2人とも『被害に遭ったことは家族にも絶対に知られたくない。金は返してほしいが家族にばれるくらいだったらいらない』と言った」

 「特殊詐欺への注意が呼び掛けられている中で、だまされてしまった自分が許せないとのショックがある。被害に遭ったのは自分にも責任があると思い詰めてしまう。被害を家族に打ち明ければ『何でだまされたの』と責められる。近所に知られたら恥ずかしくて外も歩けない。被害届を出していない被害者たちもいた。性犯罪被害と同様、表面化するのは氷山の一角だ」

 ―特殊詐欺被害者への支援は十分か。

 「国や弁護士会が弁護士費用を負担する『犯罪被害者支援制度』は、殺人や傷害、性犯罪などが対象。詐欺や窃盗といった特殊詐欺被害は抜け落ちている。財産を失った状態の中、自費で弁護士に相談したり、弁護士を通じて加害者側と示談交渉したりするのは困難だ。現行制度を改善すべきだと思うが新たな財源が必要。有効策は今のところ見いだせていない」

 ―詐欺グループの末端に当たる受け子が捕まっても、首謀者らは捕まらず事件の撲滅にはほど遠い。

 「警察の突き上げ捜査がうまくできていない。個人的には、特殊詐欺への捜査法を抜本的に見直し、おとり捜査(潜入捜査)やGPS捜査ができるよう新たな法を整備した方が良いと思っている。通信傍受も積極的に行い、国を挙げて対策するべきだ。警察官が受け子役としておとり捜査できれば、犯行は激減するだろう。人権侵害には留意しつつ、裁判所の許可を得ておとり捜査をするような仕組みを検討してもよいのではないか。米国では犯罪撲滅のために、積極的におとり捜査を導入している」

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