国山の神事で五穀豊穣を願う演目を奉納する男衆=2013年1月3日、福井県福井市国山町の八王子神社

 保存会は代わりに毎年1月3日、歌のみを神社で奉納してきたが、本来と異なる形の奉納に意義を見いだせない住民もおり、19年1月の奉納後、福井県無形民俗文化財保護協議会に活動の休止届を出した。今年の1月3日は、時代が令和に変わったことを区切りとして歌の奉納もやめた。

 保存会長の男性(79)は「(神事を)やりたいのはやまやまなんやけど、人がおらんからおそらく来年もできんやろう」と寂しそうにつぶやく。13年まで3回連続で主役を務めた男性(64)は「若い人が出る演目を省いたら続けられるかもしれないが、それではやる意味がない」とし「残してある映像や写真、資料を整理し、形だけでも後世に残したい」と話している。

 ▽国山の神事 福井県福井市国山町の八王子神社で住民が奉納してきた。拝殿の天井にシバの枝葉をつるし、草取りや牛買い、代かき、種まき、田植え、稲刈りといった農作業を歌と所作で表して五穀豊穣を祈る。男性のみで奉納し、保存会員によると「女神様が女性に嫉妬するから」。1978年に文化庁が「記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財」に選択した。市などが85年と2009年に撮影し編集した映像を、市中央公民館で見ることができる。

 ▽福井市国山町 福井県福井市殿下地区を東西に走る県道から北の山道に入り、2キロ近く上った先にある山村。かつては養蚕が盛んで最盛期は約50世帯、200人超が暮らしたとされる。過疎化が進み、1月1日時点の住民登録は16世帯30人で男性13人、女性17人。65歳以上が7割、75歳以上が5割の限界集落となっている。

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