原因不明の肺炎の患者が多く出た中国湖北省武漢市内の海鮮市場=2019年12月31日(共同)

中国・武漢の地図

 厚生労働省は1月16日、中国湖北省武漢市に滞在歴がある神奈川県居住の30代の男性が、新型のウイルス性肺炎に感染したのを確認したと発表した。男性は症状が回復し、既に退院した。日本国内での患者の確認は初めて。現地で感染者と接触するなどした可能性があるとみている。政府関係者によると、男性は中国人。政府は、首相官邸の危機管理センターに15日付で情報連絡室を設置した。男性以外に国内で感染が疑われる症状が出ている人はいないとしている。

 男性は武漢市に渡航中の今月3日に発熱し、6日に日本に帰国。10日に入院し、15日に退院した。国立感染症研究所の検査で15日に新型のコロナウイルスの陽性反応が出た。現在は自宅で療養している。発熱はないが、軽いせきは出ているという。同省によると、男性は帰国時に解熱剤を飲んで検疫を通過していた。

 武漢市では41人がこのウイルスによる肺炎と診断され、うち1人が死亡。多くが海鮮市場で働く人と客だった。世界保健機関(WHO)は14日に新型のコロナウイルスと認定した。

⇒【Q&A】コロナウイルスとは

 厚労省によると、国内で感染が確認された中国人男性は海鮮市場には立ち寄っていないが、肺炎の症状が出ている人と接触していた。新型肺炎の発症者だったかどうかは分かっていない。

 武漢市では同じ家庭内での発症例が1件あったことが分かっており、人から人に感染する可能性も排除できないとして市衛生当局が調査している。タイを観光で訪れた中国人旅行者からもウイルスが確認されている。

 厚労省はウイルスについて「持続的な人への感染の明らかな証拠はない」としているが、長時間患者と同じ場所にいるなど限定的な状況で人から人に感染する可能性は否定できないとしている。

 厚労省はウイルスの国内流入に備え、検疫体制を強化。武漢市からの帰国後、発熱などの症状が出た場合はマスクを着けた上で、滞在歴を申告して医療機関を受診するよう求めている。

専門家が示す予防策

 【東京医大の浜田篤郎教授(渡航医学)の話】コロナウイルスはせきやくしゃみで出るしぶきを介して感染しやすく、中国との往来が増える中で、患者が国内で見つかることは想定内だ。ただ、人から人に容易に感染するという段階には至っていないようだ。院内感染の可能性は否定できず、厚生労働省が患者と接触した人への対応はしているはずだが、一般にそこまで騒ぐ状況ではない。できることは手洗いやマスク着用など、流行しているインフルエンザと同じ対策くらいではないか。

新型のウイルス性肺炎を巡る経過

2019年12月30日

中国湖北省武漢市当局が市内の医療機関で原因不明の肺炎患者が相次いで確認されたと発表

2020年1月9日

 肺炎発症者から新型のコロナウイルスが確認されたと中国メディアが報道。世界保健機関(WHO)はさらに調査が必要と声明

 1月11日 武漢市が原因不明のウイルス性肺炎で男性が死亡したと発表

 1月13日 タイ保健省が、タイを観光で訪れた武漢市の女性が原因不明のウイルス性肺炎に罹患(りかん)していると発表

 1月14日 WHOが中国の肺炎患者から新型のコロナウイルスが検出されたと認定

 1月15日 武漢市衛生当局が同じ家庭内での発症例が1件あり、「人から人」の感染可能性と発表

 1月16日 日本国内で患者を初確認と発表

【コロナウイルスとは】人や動物に感染するウイルスの一種。人に感染症を引き起こすものはこれまでに数種類が知られており、風邪などの軽い症状にとどまるものが多い。ただコロナウイルスの中には、2003年に中国で流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)や、中東地域で発生している中東呼吸器症候群(MERS)のように重症化しやすいものもある。SARSはコウモリ、MERSはラクダから人に広がったとされる。

感染予防策の徹底を

 国内で初めて新型のウイルス性肺炎患者が確認されたことを受け、厚生労働省は16日、インフルエンザや風邪が流行しやすい時期であることも踏まえ、手洗いやうがい、マスク着用など感染症対策を徹底するよう注意喚起した。

 厚労省は、中国の武漢市に滞在した人でせきや発熱の症状がある場合、マスクを着用するなど感染症対策をした上で、速やかに医療機関を受診することも呼び掛けた。
 

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