【論説】戦国時代の城下町の跡がそのまま残り、国の特別史跡に指定されている福井市の一乗谷朝倉氏遺跡の保存に向け、県と奈良文化財研究所(奈文研)=奈良市=が連携研究協定を結んだ。風化が懸念される遺跡だけに、保存技術の確立や修復を急ぎたい。

 当時の町並みが分かる全国唯一の遺跡だが、1967年の発掘開始以降、野ざらしの状態が続いている。調査が終わった15ヘクタールのうち、12ヘクタールで発掘された礎石などを原則そのまま展示しているからだ。

 このため、最も初期に発掘された4庭園(湯殿跡、朝倉館跡、諏訪館跡、南陽寺跡)と、朝倉館跡の計2ヘクタールでは、礎石や庭石、石垣のひび割れや表面の剥離が特に目立つようになった。

 県によると、連携研究では奈文研から研究員4人を招き、朝倉氏遺跡にふさわしい保存技術を検討する。庭園跡などを対象に、2020年度に季節や気象条件で変化する遺跡の状態を調べ、25年度までの技術確立を目指す。

 ただ、県もこうした事態を放置していたわけではない。今回の連携研究協定の前から対策に乗り出し、12年度から、この2ヘクタールを中心とした周辺の気象や岩石の種類など、基礎的データを収集。21年度からの5年間で県の収集分を含めたデータの解析を進める方針だ。

 奈文研は国立文化財機構の構成組織の一つで、平城宮跡(奈良市)、藤原宮跡(奈良県橿原市)など貴重な遺跡の保存技術を研究している。そのノウハウを雨や雪の多い朝倉氏遺跡に応用して、ひびを修復する薬剤や養生方法の開発などを検討する。先端の技術をフルに生かしてもらいたい。

 地方自治体が貴重な遺跡の保存技術を開発するのは初めての取り組みだという。奈文研の松村恵司所長は「石材にひびが入るなど早急に処置を施さないといけない状態。最新技術を使う」と強調。杉本達治知事は「遺跡保存の基準となる技術をつくって、全国に発信したい」と述べている。

 朝倉氏遺跡は、織田信長に敵対して滅亡した朝倉氏が5代103年間にわたり越前の国を支配した城下町の跡である。館の柱を支えた石や、山から庭園に流れる水路に使われた石などが、発掘時に近い状態で露出。遺跡は昨年、勝山市の白山平泉寺、福井城址の笏谷石の石垣などとともに、中世・近世の石によるまちづくりを伝える物語性が評価され、文化庁の日本遺産に認定されている。

 23年春の北陸新幹線県内延伸で観光客増が見込まれる中、貴重な遺跡の再整備が求められている。福井が誇る観光資源だけに、現状の形での保存が求められるだろう。全国発信できる成果を期待したい。

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