【越山若水】「受験戦争」というと、昭和の高度経済成長期を思い出す。高学歴を求め有名大学を目指す激しい進学競争が起こった。1979年度に始まった共通一次試験で一層拍車がかかった▼ただ受験の厳しさは遠い昔も同じだった。大陸に後れを取っていた日本は7~9世紀、国家的な使命から遣唐使とともに留学生を派遣。その数は毎回わずか20人ほどだった。彼らは名誉と責任を胸に命がけで渡航し、帰国後は学んだ知識を生かし国づくりに貢献した▼8世紀になると、日本独自の官吏養成機関「式部省大学寮」が設けられた。入学は官吏の子弟に限られたが、有力貴族の子弟は学歴に関係なく高官への道が保証された。このため中・下層出身の貧乏学生が多く、大学奨学金の支給や学科増設の振興策が打ち出された▼ところが各氏族は一門の繁栄を望んで個別に大学別曹を創設した。平安中期に藤原氏が政治を独占すると、大学は廃れて学問より武芸を重んじる武士の世になった。いつの時代も教育は政治に翻弄(ほんろう)されるようだ(「この発想が勝敗をわける」藤川桂介著、ベネッセ)▼来年度始まる大学共通テスト。英語民間試験と国語・数学の記述式問題が批判の集中砲火を浴び、結局は導入が見送られた。大山鳴動してねずみ一匹の騒動だった。さて今週末、最後のセンター試験が行われる。慌てず騒がず平常心で臨んでほしい。

※このコラムは1月14日午前9時50分に一部修正しました。

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