【越山若水】ふるさと福井をこよなく愛した2人の文化人が先月相次いで亡くなった。小浜市の中島辰男さんと越前市の上坂紀夫さん。91歳と88歳だった。福井の歴史や文化、ゆかりの人物に関する多彩な著書を出版し、その魅力を発信してきた▼元県立若狭歴史民俗資料館長の中島さんには「福井県の誕生」など郷土史関係の著書があり、「若狭路往還」では、最後の将軍徳川慶喜も居住した小浜藩邸京都屋敷跡と、江戸の小浜藩邸跡に自ら奔走して碑を建立したいきさつも紹介している▼高校教諭だった上坂さんは記録作品「特務艦関東の遭難」や陶芸家水野九右衛門、歌人橘曙覧らの人物伝を手がけたほか、絵本画家いわさきちひろと越前市のかかわりを調査し「生誕の地顕彰会」の立ち上げにも尽力した▼「誰かがふり返ってみつめたときにそこに小さく光る石のような仕事をしたい」(上坂さん)、「歴史は『見直し』を絶えず求めており、従来の郷土史にも新しい視点が必要」(中島さん)など執筆に込めた思いがあった▼2人に共通するのは、平和への願い。上坂さんは「宰相岡田啓介の生涯 2・26事件から終戦工作」を著し、中島さんは昨年、太平洋戦争中に陸軍予科士官学校で書いた日記を刊行。題名を「再び戦争に突入しない為に九十歳から若人に贈る」とした。もうすぐ成人式。次代の若者に受け止めてほしい本だ。

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