【論説】イランが革命防衛隊司令官殺害の報復として、米軍が駐留するイラクの空軍基地などを十数発の弾道ミサイルで攻撃した。イランが国家として米軍を攻撃したもので、米国による司令官殺害と合わせて、両国は国家間の戦闘行為に踏み出したことになる。

 報復のエスカレートによる本格的な軍事衝突の懸念が強まっている。全面衝突の危機を回避すべく、日本を含めた国際社会は両国に理性的な行動をとるよう、真剣に説得に当たるべきだ。戦争の一歩手前で踏みとどまれるか否かが懸かっている。

 攻撃後にイランの穏健派であるザリフ外相は「釣り合いのとれた自衛行動を完了した」と表明。穏健派のロウハニ大統領の顧問は「米国が攻撃すれば、地域で全面戦争が起きるだろう」と米国に反撃しないよう求めた。米国との衝突を避けたいのがイラン側の本音であるのは明らかだ。

 当面の焦点は米国の次の行動にある。米軍基地への攻撃では大規模な米兵の犠牲は報告されていない。トランプ米大統領は「今のところ良い方向」としている。米側の出方次第で報復の連鎖に陥る恐れがある。

 司令官殺害の決定は深慮を欠いたものだったが、側近らも反対しなかったという。今後は国防総省や統合参謀本部、イランとの戦争が世界に与える影響を熟知する米政府の専門家らが、大統領に誤った決定をしないよう説得すべきだ。

 問題は、イラン側にもある。司令官を失った革命防衛隊の強硬派が今回の攻撃で満足せず、さらなる報復に出かねない。イスラエルをも攻撃すると明言しているほか、タンカーやサウジアラビアの石油施設なども攻撃対象となる可能性もある。イラン政府が周辺国の民兵組織を含め、こうした動きを制御できるかも鍵になろう。

 グテレス国連事務総長が語ったように、今回の緊張は「今世紀で最も高いレベル」にある。もとはといえば、米国がイラン核合意から一方的に離脱したことから始まった。米国には反撃回避を求めるとともに、イラン核合意の意義に立ち返り、経済制裁の見直しなど柔軟な姿勢を求めたい。

 国際社会は米国、イラン双方に自制を働きかけるとともに、イランの核問題などを包括的、建設的に話し合う場を提案する必要がある。

 ペルシャ湾地域は日本をはじめ世界各国が依存する石油や天然ガスの生産地が集中する。日本はこれまで米国とイランの双方との関係を重視する立場で対応してきた。安倍晋三首相はトランプ氏との蜜月関係を築いてきた。ならばこの危機の回避に向け、トランプ氏に強く自制を促すべきだ。

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