【論説】福井県や県内企業が製造に携わった超小型の人工衛星「すいせん」が今年、ロシアのソユーズロケットに搭載されて中央アジア・カザフスタンの宇宙基地から打ち上げられる。時期の詳細は未定だが、4月~9月の予定という。今から待ち遠しい。

 福井の宇宙分野参入を巡っては、県内24の民間企業・団体が参加して2015年9月に発足した「ふくい宇宙産業創出研究会」が出発点となる。東京大の協力を得て人工衛星の製造技術を学び昨年、まずはすいせんとは別の衛星2基を完成させた。1基はアフリカ中部ルワンダ向けに製造した衛星、もう1基は水を推進剤に使うエンジンを搭載した世界初の衛星。11月に福井県産の衛星として初めて国際宇宙ステーションから宇宙空間に放出された。

 さらに、東京五輪・パラリンピックの機運を盛り上げるため、アニメ「機動戦士ガンダム」の模型を載せて3月に打ち上げられる人工衛星も、東大や県内企業が共同開発した。研究会発足からわずか4年余りだが衛星開発・製造の実績を重ね、県内技術者の力は着実にレベルアップしている。

 すいせんの機体もすでに完成し、現在は最終ステージである環境試験を控えている段階。県民へのお披露目を2月以降に計画しており、いよいよ打ち上げを待つばかりとなる。

 ただ、打ち上げて終わりというわけではない。むしろここからが大切なのだ。培った知識や技術を、超小型人工衛星の量産化という新ビジネスにどうつなげるか、関係機関が協議し体制づくりを進める必要がある。比較的コストがかからない超小型衛星へのニーズは世界的に高まっており、すいせんのプロジェクトに携わる県内企業には、早くも国内外から製造の打診が入っているという。

 福井市の県工業技術センターには、宇宙空間に近い過酷な環境を再現する試験機など衛星開発に必要な国内有数の設備がそろっている。こうした恵まれた環境を有効に活用するべきだ。

 機体の製造に加え、人工衛星から得たデータを使ったビジネス創出も急ぎたい。県民衛星技術研究組合が開発した衛星画像表示システムは、土砂災害や急傾斜地の危険区域、病院や避難所、河川の水位観測ポイントなどを表示できるという。組合では各自治体が持つ防災システムに、この衛星データを連携させるアプリケーションを作り販売する計画だ。自然災害が頻発する中、地域防災への貢献という点でも期待が膨らむ。

 2020年は福井の宇宙産業にとって、大きな歴史を刻む年になりそうだ。繊維や眼鏡とともに、福井の基幹産業に成長する日も遠くないかもしれない。

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