【論説】人口減少に伴い、増え続ける空き家対策として、大野市は県宅地建物取引業協会(県宅建協会)と空き家の情報提供に関する協定を締結した。市が取りまとめた情報を同協会の会員に提供することでマッチングを強化し、空き家活用を強化する狙いがある。

 市は2016年度に空き家実態を調査。市内には約500件の空き家があり、このうち約3割が活用可能な物件だった。18年、国が「空き家所有者情報の外部提供に関するガイドライン」を策定。自治体から民間に情報提供しやすくなったことを受けたものだ。

 市が所有者の申し出をとりまとめ、空き家や空き家跡地情報を市から同協会に提供。大野、勝山両市の会員を中心に、物件によっては県内500人余りの全会員に周知。専門的な立場から売却、賃貸のマッチングをしてもらう。市場価値を考え、建物を取り壊した上での売買も想定している。

 一方、大野市がこれまで取り組んできた空き家対策に「越前おおの空き家情報バンク」がある。08年にウェブサイトを開設し、物件の情報を発信。バンクでの情報公開は、不動産業者の仲介が必須条件だ。

 今回の県宅建協会との協定では、取引は専門業者に委ねられるが、最初の手続きの窓口が市となることで、不動産売買の経験がない市民にとっても敷居が下がるのではないだろうか。

 管理が行き届かないまま空き家を放置すれば、治安や防災機能が悪化する。景観を損なえば地域の活力は衰退する。空き家問題は全国で深刻化しており、15年には空き家対策特別措置法が全面施行された。倒壊の恐れや衛生上の問題がある空き家を強制撤去できるなどの権限を市町村に認めた。

 だが、自治体には手続きを進めるノウハウが乏しく、強制撤去されたのは19年3月末までに165件。所有者から費用を全額回収できたケースは少なく、多くは自治体が負担している。

 県宅建協会の此下美千雄副会長(大野市)は「空き家になる前に手を打つことが大切」と訴える。住まなくなった建物は急速に傷み、活用するには修繕が必要となる場合がある。空き家になってからの対応は所有者にとって負担が重い。

 市には近い将来、空き家となることが予想される所有者からの相談もあるという。空き家を生まないためには、市場への流通を早めに考えるよう所有者に促す対策も必要となる。将来にわたって安全で快適な住環境を維持することは住民にも責任があることを認識したい。

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