【論説】NHK大河ドラマ「麒麟(きりん)がくる」の放送開始が迫る中、主人公の明智光秀が門前に10年間暮らしたと伝わる坂井市丸岡町長崎の称念寺への注目度が高まっている。既に大型バスでのツアーもあり、地元住民や観光団体、同市などは今月、「おもてなし実行委員会」を発足させ受け入れ態勢を強化、地域の歴史や文化遺産を発信していく考えだ。全国へのアピールの好機をぜひ、ものにしたい。

 「麒麟がくる」は、主君の織田信長を本能寺の変で討った「謀反人」というイメージが強い光秀を主役に据えた意外性が歴史ファンの間で話題になっている。一方で、多くの武将が正室の他に側室を持つ一夫多妻だった戦国時代に「一夫一妻」を貫いたのが光秀だ。

 その夫婦愛の象徴といえるのが称念寺に語り継がれる「黒髪伝説」。美濃を追われ、妻熙子(ひろこ)を伴って称念寺に逃れていた際、朝倉家家臣と連歌会を催す機会を住職が設けた。貧困の光秀には資金がなかったが、妻の用意した酒肴(しゅこう)で成功し仕官の道が開けたという。その資金は妻が自慢の黒髪を売って用立てたものだった。

 「麒麟がくる」がどのように描かれるのかは分からないが、物語の前半で、各地を放浪し妻と愛を育むストーリーがあるとすれば、外せないエピソードといえるだろう。称念寺の名前が一気に「全国区」となる可能性もある。

 こうした中「全国から訪れる観光客をもてなし、地域の歴史や文化遺産を発信しよう」と、たかむくのまちづくり協議会や坂井市、市観光連盟が昨年9月に「おもてなし準備委員会」を発足させた。12月には地元住民らによる観光ガイドを試験的に開始。本格始動に向けて▽記念写真の撮影スポットとして等身大の光秀パネル設置▽逸話を紹介する看板の設置▽リーフレット制作▽SNSの活用―などの準備を加速させている。

 高松市の旅行会社は12月下旬の時点で、2月までに少なくとも15回のバスツアーを組んでいる。岐阜市の金融機関も、年金友の会会員を対象とした福井ツアーの実施を決めており、4~6月に大型バスで順次やって来るという。

 一方で、称念寺と光秀の関係は、これまで坂井市民にさえあまり知られていなかった。「麒麟がくる」を実現に導いた京都の団体はNHKへの要望や都内でのPRイベントに加え、約26万人分の署名を集めたとされる。観光客のもてなしには市民一人一人の力が欠かせない。同委員会の活動で、市全体を盛り上げていってほしい。

関連記事