【論説】国際的に重要な湿地を保全するラムサール条約に登録されている敦賀市の中池見湿地の保全活用に向けた条例案が、敦賀市会で可決された。管理運営基金が近く枯渇する見込みであるためで、経費を抑える一方、物販などで収入も得られるようにし、基金の延命を図っていく考えだ。多くの生命を育み、環境学習の場でもある貴重な湿地をどう次代につないでいくのか。条例を機に、さらなる官民の知恵に期待したい。

 同湿地は、1992年に大阪ガスが液化天然ガス(LNG)基地の建設計画を発表し、一時は湿地消滅の危機に立たされた。しかし貴重な動植物の生息が明らかになったことなどで、2002年に計画を中止。05年に湿地の大部分と維持管理協力金として4億2千万円(中池見保全活用基金)を市に寄付した。この基金が、このままでは22年度で枯渇するとされる。

 来年4月に施行される条例では、ビジターセンターと展示古民家を12月1日から翌年2月末まで休館するなどして運営委託費などを縮減する一方、市民団体などによる木材や植物といった里山資源の無償活用、物販を可能にする。自立的な保全活用を図っていくことになり、市民団体には資金確保を含め、より主体的な取り組みと知恵が求められるといえそうだ。

 ただ、利活用の中心となるべき「中池見湿地保全活用協議会」は、16年策定の保全活用計画の中で将来的に事業・資金計画を立案、実施する自立的な組織運営を掲げたが、その筋道はいまだ見えない状態だ。環境や生態系を保護しながらの利活用となれば、これまで年間2千万円ほどかかっていた費用を稼ぐのはそう簡単なことではないだろう。

 絶滅危惧種を含む2千種を超す生き物が生息し、地下には約10万年分の気候変動を記録した厚さ約40メートルに及ぶ泥炭層がある湿地を守ることの意義は言うまでもない。先日、同湿地での保全活動などが認められ、「未来をつくる若者・オブ・ザ・イヤー」内閣総理大臣表彰を受けた敦賀市の藤野勇馬さんは、「世界でも例を見ない湿地が市街地の近くにあり、生き物の命のゆりかごになっている」と、湿地の価値を話す。

 物品を販売するにしても、まずは中池見湿地の価値を市内外に広く、深く伝え、理解してもらうことが大切だ。急がば回れではないが、保全活用の担い手となるファンを増やすといった地道かつ基本的な取り組みこそ、中池見を守る一歩につながる。残された時間は長くない。

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