【論説】福井藩主松平春嶽と同藩士橋本左内について学び、全国発信している「白鷺舎(はくろしゃ)」という歴史愛好グループをご存じだろうか。都内で講演会を企画したり、ウェブ上で勉強会を開いたりと多彩な活動を続けている。これからは全国の歴史ファンを福井に呼び込む企画の提案にも力を入れたいという。2023年春の北陸新幹線開業を控え、誘客のヒントになるのではないか。

 ■県外女性2人が結成■

 東京在住の雀部(ささべ)なぎささんと福井県出身で名古屋市在住の東山成江さんが、昨年5月に福井市で開かれたシンポジウム「橋本左内と明治維新」に関わった縁で結成した。雀部さんら企画運営を担う白鷺舎と別につくる白鷺会には現在、約40人の会員が加入する。

 グループ名は春嶽が幽閉中の左内に対し、その潔白をシラサギになぞらえ、「体をいとうように」という趣旨の漢詩とともに贈ったエピソードから取ったという。研究者ではない2人だが、春嶽や左内に関する造詣は深く、何より行動力が抜群だ。

 グループとしての最初の活動は、左内を取り上げたNHKの番組「英雄たちの選択」への制作協力。東山さんのアイデアで、放送日には福井市のハピテラスでパブリックビューイング(PV)を企画した。歴史教養番組のPVには、珍しさも手伝って幅広い世代が集まった。

 地域による機会格差をなくそうと、過去に開いた講演会を動画配信し、オンライン会議のシステムを使ったウェブ勉強会を開くなど、ネットを活用した活動に力を入れている。

 ■魅力ある歴史の宝庫■

 「あれだけの石垣が残っていれば、(福井城址(じょうし)は)お城と同じ価値があると語る歴史研究者もいる。もっと売り出していけるはず」

 そう語る雀部さんも福井市中央公園に立つと、春嶽が過ごした屋敷「御座所」の風景がまぶたに浮かんでくるという。ディープな歴史ファンにとって、聖地になり得る魅力を秘めた場所が、県内にまだまだありそうだ。

 また、県内には幕末の政治史を研究する上で良質な資料が多く残されている。例えば、筆まめだった春嶽は大量の日記を書き残した。国の重要方針を話し合った会議の内容から、歴史ドラマの時代考証に役立つような日常の話題まで幅広い。これらの資料研究がさらに進めば、福井県に興味を持つ歴史ファンは増えるという。

 ■歴史ファン呼び込め■

 県内を訪れる歴史ファンを増やすために雀部さん、東山さんが必要だと考えるのは史跡の整備。「福井には聖地になり得る場所はあるけれど、モノがない。本物がないなら石碑がほしい」と口をそろえる。

 ほかにも、江戸の古地図と現代の地図を見比べることができるアプリの福井版の開発、仮想現実(VR)技術を使い史跡で当時の風景を再現する仕掛けなど、自ら現地を訪ね歩く歴史ファンらしいアイデアを持っている。

 磨けば光る観光資源ならば、放っておくのはもったいない。各地にある幕末の史跡に石碑を整備し、ルート化できれば、福井県が幕末ファンの「聖地」の一つになることも、夢ではないかもしれない。

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