【論説】2019年生まれの赤ちゃんは初めて90万人を割り込み、過去最少の86万4千人に落ち込む見通しとなった。出産の障壁となっている雇用の不安定要因を取り除き、仕事と育児の両立支援など社会全体で出産、子育てしやすい環境を整備することが重要だ。

 死亡数から出生数を引いた人口の自然減も過去最大の51万2千人となる見通し。少子化と人口減に歯止めがかからず、出生数の減少は国立社会保障・人口問題研究所の推計より2年早いペースで進んでおり、深刻と言わざるを得ない。

 出生数が落ち込んだのは、人口が多い団塊ジュニア世代の出産がヤマを越し、出産適齢期とされる25~39歳の女性数が減ったのが要因だ。

 この世代は就職氷河期にも重なり、低賃金の非正規雇用が多いとされる。経済的理由で結婚・出産を諦めるケースも多いとみられている。内閣府の調査でも「結婚するには障害がある」とした未婚者に障害の内容を聞くと、男女とも4割強が「結婚資金」を挙げている。バブル経済の頃2割以下だった非正規労働者は今や4割に近く、正社員への転換や待遇改善が求められる。

 出産を機に、女性が仕事をあきらめずにすむ対策も大事だ。働く女性は増えているが、仕事と結婚・子育ての両立を困難視し、未婚、晩婚、晩産化が進む。正規雇用であっても長時間労働が常態化していれば両立は難しい。男性が家事や育児を分担しやすいような働き方改革をいっそう推進するなど、第2子以降を持てる環境を整えたい。

 少子化で人口が減少すれば、国内総生産(GDP)の6割を占める個人消費が落ち込み、経済成長は厳しくなる。将来の担い手が減ることで、社会保障制度の土台が揺るぎかねない。

 ただ、社会の近代化や医療の進歩の結果である少子高齢化は完全には止められない。それでも経済や社会保障を維持できるよう、イノベーション(技術革新)により経済成長を図るといった柔軟な発想も必要だろう。

 政府は1994年以降、保育所整備などが柱の「エンゼルプラン」を実行。今年10月からは、主に3~5歳児が対象の幼児教育・保育無償化もスタートさせた。だが、少子化の進行を抑える十分な成果は上げられていない。

 フランスでは給付水準が高い家族手当、住宅手当などの経済支援や税制優遇策、育休中の所得補償などがある。夫婦2人で子育てできる働き方が確立され実を結んでいる。こうした例も参考に、官民挙げてライフスタイルから見直すような対策に踏み出す必要がある。

関連記事