田中実さん

金田龍光さん

 拉致問題を巡り北朝鮮が2014年、日本が被害者に認定している田中実さん=失踪当時(28)=ら2人の「生存情報」を非公式に日本政府に伝えた際、政府高官が「(2人の情報だけでは内容が少なく)国民の理解を得るのは難しい」として非公表にすると決めていたことが12月26日、分かった。安倍晋三首相も了承していた。複数の日本政府関係者が明らかにした。もう1人は「拉致の可能性が排除できない」とされている金田龍光さん=同(26)。

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 日本では身寄りがほとんどなく「平壌に妻子がいて帰国の意思はない」とも伝えられ、他の被害者についての新たな情報は寄せられなかった。被害者全員の帰国を求める日本政府にとって「到底納得できる話ではなく、国民の理解も得られない」(高官)と判断した。菅義偉官房長官は共同通信の取材に「今後の対応に支障を来す恐れがあることから、具体的内容について答えることは差し控える」とコメントした。

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 2人の生存情報を日本政府が入手して5年余り。日朝交渉に進展がない中、拉致問題解決を「最重要課題」と位置付ける安倍政権が非公表を続けている判断が適切なのかどうか問われる。

 2人は神戸市出身で同じラーメン店の店員だった。両国は14年5月、拉致被害者の再調査などを盛り込んだ「ストックホルム合意」を取り交わした。北朝鮮はこの前後、田中さんと金田さんが北朝鮮に入国し妻子と共に暮らしている、と日本政府に知らせたことが既に判明している。

 この後、北朝鮮はミサイル発射を繰り返し再調査も中止され、日本政府は2人に面会できなかった。ただ両国の接触は水面下で続いていた。北朝鮮は田中さんについて14年までは「未入国」としていたが一転認めた。金田さんについては言及していなかった。

 田中さんは1978年6月、成田空港からウィーンに向け出国。その後連絡が取れなくなった。北朝鮮の元工作員とされる男性(故人)が「工作員だったラーメン店主に誘い出され、ウィーン経由で連れて行かれた」と告白し、拉致疑惑が発覚。政府が05年に被害者に追加認定した。

 在日韓国人の金田さんは79年11月ごろ、田中さんに会うため「東京に打ち合わせに行く」と周囲に話した後行方不明になった。出国記録はない。

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