【越山若水】インフルエンザの流行が本格化したと先週、厚生労働省が発表した。過去10年では、新型が流行した2009年に次いで2番目の早さ。県は注意報を発令。不気味だ▼インフルエンザは時代とともにあった。江戸時代にも何度か新型に見舞われた。福井市出身の作家山崎光夫さんの「薬で読み解く江戸の事件史」(東洋経済新報社)によると、世界と同時流行し「お駒風」(1776年)「アメリカ風」(1854年)などと呼ばれた▼お駒風は当時浄瑠璃で話題になった城木屋お駒、アメリカ風はペリーが再来航した年にちなんで命名された。それにしても、鎖国の日本でなぜ欧米で流行したインフルエンザがはやったのだろう▼外国の窓として唯一開かれ、オランダとの交易が盛んだった長崎の出島から侵入したと山崎さんは推測する。密航も感染ルートだった可能性があるとみる。江戸時代は大陸伝来の医術と日本で改良された医術で対応した。大正時代にインフルエンザのスペイン風邪が猛威を振るった時も、漢方を基本に、症状に応じて他の生薬を加えたり、はずしたりする江戸医学の処方が効果的だったという▼現代においては、あらゆるタイプのウイルスに効く「万能ワクチン」の開発が国内外で盛んになってきた。米国では臨床試験も開始。世界的な大流行を食い止められるか、人間とウイルスの熱い戦いは続く。

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