5月に69歳で死去した名歌手の、大ヒット期を除く変則ベスト。その多くが入手困難だったが、決してカルト音源集ではない。むしろ『また逢う日まで』に呪縛されていたのは、我々の方だった。
前半は1987年アルバムから。ビールCM曲としてヒットした『サマー・ラブ』ほか、井上大輔が大滝詠一風に、また馬飼野康二が加山雄三風に仕上げ、“海の男”へのイメチェンを図ったのが興味深い。また、芹澤廣明による『Tonightさよなら』は、チェッカーズ『Song for U.S.A.』風の爽やかで切ないバラード。優しい声はまるで夕凪海岸だ。
後半は、75〜92年に4社に分散した楽曲だが、どの時代も声が瑞々しい。特に、三浦秀美とのデュエット『愛だけあれば』は、洋楽ばりに壮大で、「愛だけあれば」「めぐりあえるさ」の歌声に震えた。
高橋久美氏による解説も飾らぬ愛がいっぱい。過ぎゆく夏とともに聴けば、気持ち次第で大切な人に“また逢える”と安らぐはず。
(ソニー・ミュージックダイレクト・2000円)=つのはず誠