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『愚行録』 人間関係の複雑さ浮かび上がる群像劇  

(2017年2月15日午前11時08分)

(C)2017「愚行録」製作委員会 (C)2017「愚行録」製作委員会


 昨年のベネチア映画祭でオリゾンティ部門に出品された日本映画だ。ポーランドの国立映画大学で学んだ石川慶監督のデビュー作で、貫井徳郎の“イヤミス”小説が原作。迷宮入りした一家惨殺事件の真相が、事件を追う週刊誌記者の視点で描かれる。

 とはいえ、謎解きを楽しむタイプの映画ではない。犯人捜しよりも動機に、否、一見幸福で善良そうな家族がなぜ殺されなければならなかったのか? 同じ人物でも見る人次第で別人に見える人間関係の複雑さ、難しさが、関係者たちの証言から浮かび上がる群像劇で、本作の怖さはわれわれが住む社会自体の怖さなのだ。

 そんなサスペンスと人間ドラマの二面性を、この新鋭監督は撮影手法そのものに象徴させる。本作のカメラはサスペンスをあおるように狭い室内でもよく動くのだが、サスペンス映画のセオリーにのっとるならディープフォーカスが選択されただろう。ワイドレンズによる画面のゆがみが作品世界のゆがみとなって見る者の不安を増幅させるから。ところが、本作では深度の浅いレンズを用いてこまめにピントが調整されている。これは画面を安定させるためで、むしろ人間ドラマの手法だ。

 ほかにも、身体、特にパーツである手足や指へのこだわりなど、人間の内面や社会の闇といった目に見えないものを視覚化しようという意図が随所で感じ取れる。これは世界で戦うための必須条件。楽しみな監督がまた一人登場した。★★★★★(外山真也)

監督:石川慶

出演:妻夫木聡、満島ひかり、小出恵介、臼田あさ美、市川由衣、中村倫也

2月18日(土)から全国公開

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