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医師への謝礼、医療不信浮き彫り 密室の慣習、双方戸惑い

(2011年10月18日午後1時05分)

拡大 医師と患者の間で今も続く「謝礼」。日本医師会の職業倫理指針(左下)は「医療全体に対する信頼を損なう」と戒めている(病室とのコラージュ) 医師と患者の間で今も続く「謝礼」。日本医師会の職業倫理指針(左下)は「医療全体に対する信頼を損なう」と戒めている(病室とのコラージュ)


 手術の前後や退院時、患者が医師へ個人的に渡す現金などの「謝礼」。県内では「昔に比べて減った」とされるが、関係者は「近年では感謝の気持ちより、医療不信の裏返しとして続いている」と指摘する。医師と患者の間だけで行われ「同僚とも話さない」(県内医師)という密室の慣習。双方が戸惑いながら今でも残り、信頼で結ばれるべきはずの両者を揺さぶっている。(柴田裕介)

 ◆優位な立場

 今年4月、県内の病院に入院した30代女性は手術前日、説明に1人で病室を訪れた男性主治医に5万円の現金を封筒に入れて渡した。医師は「ああ、どうも」と、当たり前のように白衣のポケットにしまった。「びっくりした。今でもそうなんだ、と」。ナースセンターに持って行った菓子折りはかたくなに拒否され、母が無理やり置いてきたところだった。

 半年先まで手術の予定が入っている人気の医師。当時は「この人、謝礼だけで生活できるんじゃないの」と反感を感じた。しかし、今は謝礼をして良かったと思う。「患者は医師に比べ弱い立場。でも、お金をあげることで『しっかりやりなさいよ』と、対等かむしろ優位に立てた」

 ◆わが家族だけは

 福井大医学部の井隼(いはや)彰夫教授(医療倫理・医療安全学)は謝礼の慣習について「1990年代末に医療ミスが社会問題化し、医者と患者の関係がぎくしゃくしだした。謝礼は昔からあるが、そのころと比べ意味合いが変わった」と指摘する。

 「『病院は信頼できる場所ではない』と謝礼を贈らない人が増える一方で『わが家族だけは間違いない対応を』と渡す人が増えた。結果として謝礼はそう減っていない」と井隼教授はいう。

 今年3月、提出書類のファイルに封筒を紛れ込ませ、主治医に商品券1万円を渡した70代女性は「近所の外科医の家に付け届けがたくさん届いており、そういうものだと思った」と語る。60代女性は7月、県会議員を頼って医師の自宅を調べ、現金10万円を送ろうとした。「気は心。医師だって表向きは断っても受け取れば対応は変わるはず」という思いからだった。

 ◆使えない金

 謝礼を受け取る側の医師の心境は複雑だ。ある外科医は「月1〜2回は謝礼がある。多額の現金の場合もある」と打ち明ける。命を左右する手術も多いこの医師は「謝礼の有無で対応が変わることはない。ただ手術を前に、わらにもすがる思いの家族を突き放せない」という。

 受け取った謝礼は封を開けることなく、自宅の机にしまったままだ。「使えばきっと『今月小遣いが厳しいから、誰か謝礼をくれないか』と、あてにするようになる。そこまで落ちたくない」という。現役を続ける限り、この金は使えないと考えている。

 60代医師は謝礼を贈る患者がいる一方、医師に礼さえ言わない患者が増えていることに困惑している。「謝礼は当然、何らかの見返りを求めている。感謝の気持ちは『ありがとうございます』と伝えてもらえれば十分なのに」

 井隼教授は「謝礼を受け取ることで気がそれ、優先されるべき別の重症患者の変化を見逃すことになりかねない。百害あって一利なし」と、医師の姿勢を厳しく戒める。

 一方で「謝礼は結局、患者が『贈らない』限りなくならない」とも言う。「患者が主体的に治療を選択するのが現代の医療」とし「謝礼は昔ながらの?お任せ医療?の名残。医者と患者は疾患に立ち向かうパートナーなのだから、謝礼なんて必要ない」と患者の側にも意識改革を求めた。

 

 

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