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臓器移植亡き夫の思いかなえたい 「献眼」で姿違っても続く“命”

(2017年3月7日午後5時10分)

拡大 夫との思い出の写真を見つめる美和さん。夫は生前から臓器移植を希望していた=2月3日、福井県越前町 夫との思い出の写真を見つめる美和さん。夫は生前から臓器移植を希望していた=2月3日、福井県越前町


 懸命に心臓マッサージをした後、医師は「これ以上は無理だと思います」と言った。息を引き取った福井県越前町の上野健一さん=当時(50)=の妻美和さん(48)は「臓器提供をお願いします」と答えた。

 2015年12月。上野さんはいつものように布団に入った。翌朝、冷たくなっているのを家族が発見。救急車で病院に向かったが、午前中のうちに亡くなった。死因は大動脈瘤破裂だった。

 上野さんは生前、すい臓を悪くし、入院したことがあった。体が弱いことを自覚し、美和さんには「何かあったら絶対臓器提供してほしい」と伝えていた。

 2人の子どもや同居する上野さんの父母は、直接本人の意思を聞いたことはなかったが、免許証の臓器提供を希望する欄には丸が付いていた。美和さんは「亡くなった直後は、死因も分からずみんなおろおろだった。ただ、主人の思いを何とかかなえてあげたかった。反対しなかった家族には感謝している」。

   ◆  ◆  ◆

 病院から連絡を受け、県アイバンク移植コーディネーターの平澤ゆみ子さん(44)は現場に向かい、家族に対し献眼の意思を最終確認。同バンクの要請で訪れた眼科の医師が、眼球を摘出した。

 その後、眼球があったくぼみに綿を詰め、義眼を装着。透明な糸でまぶたを閉じ、最後に平澤さんが「エンゼルメーク(死化粧)」を施した。

 眼球は心停止後、おおむね10時間以内に摘出する。角膜は、水疱性角膜症など角膜が混濁している患者に10日以内に移植される。献眼で通夜や葬儀の日程がずれ込むことはない。

 提供者(ドナー)と移植患者を仲介する同バンクは1987年、国内42番目として誕生。県内の献眼登録者数は1万人を超える。2015年度の県内の献眼者数は26人で、都道府県別の人口当たりの数は2位。福井県済生会病院の棚橋俊郎・眼科主任部長(54)によると、福井県はアイバンクの取り組みが盛んで、県内で移植を待っているのは数人といい、比較的ドナーが見つかりやすい環境だという。

 ただ、国内に目を転じると状況は違う。角膜移植眼数は近年、2800前後で推移しているが、国内のドナーによる角膜の数は減少の一途。15年度は、初めて「輸入角膜」が「国内」を上回った。

   ◆  ◆  ◆

 生前の上野さんは瓦ふき職人だった。「ずっと後に残る仕事をしたい」のが理由だった。美和さんは「主人は人のために何かを残したかったのだと思う」と話す。

 上野さんが亡くなった後、美和さんは免許証の臓器提供の欄に丸を付けた。「万一、自分の子どもに不幸があっても、(本人が希望すれば)私は臓器提供をすると思う」。火葬され骨になっても、生き続けられることを夫から教わった。

 上野さんの角膜は千葉県の70代男性と、福岡県の50代男性に移植された。美和さんは「いつか二つの県を訪ねてみたい。主人が見ているだろう風景を、私も見てみたいから」。

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 福井県アイバンクが創立30周年を迎えた。移植を決断した家族の思いや悩みを取材した。

 

 

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