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「延命でなく自然な最期」広がる 第1景・超高齢社会(9)

(2017年3月3日午前7時30分)

拡大 積極的な看取りを実践している「芦花ホーム」。入居者の食が減っても無理に食べさせない=2016年12月、東京都内 積極的な看取りを実践している「芦花ホーム」。入居者の食が減っても無理に食べさせない=2016年12月、東京都内


 「みんな死ぬための準備をしているんですよ」。東京都世田谷区立特別養護老人ホーム(特養)「芦花ホーム」の常勤医師、石飛幸三さん(81)は言う。入居者100人の平均年齢は90歳。要介護度の平均は重度の4・4で、ほとんどが認知症だ。

 ここでは看取りを積極的に実践。医師、介護士、管理栄養士らが家族と何度も話し合い、死を迎えるためのサポートをしている。

 「300人ほど看取ってきた」と話す石飛さんは、施設の医師になって12年目。それまでは大病院の外科医として腕を振るい、苦しい死にざまをたくさん見てきた。

 施設に来ることになり、まず思ったことは「モルヒネなどを使う緩和ケアをどうすべきか」ということ。しかし杞憂だった。「老衰で食が減ったら無理に食べさせなくてもいい。すると眠る時間が長くなっていく。そして穏やかに旅立っていく。300人みんなそうだった。モルヒネなんて必要ないんだよ」

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 施設には口から食べることが困難になった女性の入居者がいた。「妻は食べることが大好きだった。だから(胃に直接栄養を送る)胃ろうは付けたくない」という夫は、毎日施設を訪れ、寝たきりの妻の食事介助をした。1パック300キロカロリーのゼリーを1日平均2パック、ゆっくりと食べさせた。

 結局女性はその1年半後、笑顔を向ける夫のそばで眠るように息を引き取った。石飛さんは「1日600キロカロリーは、入居者の半分以下の摂取量。それで1年半。医師の感覚では信じられなかった」。

 2012年度の内閣府調査によると、治る見込みがない病気では「延命のみを目的とした医療はせず、自然に任せてほしい」と回答した65歳以上の人は91・1%で、02年度に比べて10ポイント上昇。自然な最期を求める意識は広がっている。

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 福井県の特養の数は06年は54(定員3855人)だったが、現在は100(同5190人)。入居者の平均要介護度は08年の3・83から16年は3・96に上昇した。

 「施設は老後を暮らすというより、最期を迎える場所になりつつある」(石飛さん)が、特養に医師が常駐しているケースはまれ。県内では1施設のみで、嘱託医が定期的に訪れるのが主流だ。ある施設代表者は「常駐は理想だが、給料や本人のやる気など課題がある」と指摘する。

 芦花ホームでは、看取りを行うようになってから、介護士の意識も変わってきた。白石晶紀さん(47)は「これまで介護士は、時間内に入居者の食事を済ませることで評価された。決められた量を何とか利用者の口の中に入れていた。でもそうじゃないと教わった」。甘党の人には、耳かきほどのあんこを舌の上に載せてあげるなど、少量ずつ時間をかけて、利用者の口に運ぶようになった。

 石飛さんや介護士が机を並べる医務室の入り口前には小さな額縁が飾られ、こんな言葉が添えられている。「人生を支える役割は、時に医療を超えます」

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