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在宅医療充実「家で死にたい」尊重 第1景・超高齢社会(7)

(2017年3月1日午前7時20分)

拡大 電動ベッドの小林さん(右)を笑顔で診察する紅谷さん。自宅に戻った小林さんの体調は安定している=福井市内 電動ベッドの小林さん(右)を笑顔で診察する紅谷さん。自宅に戻った小林さんの体調は安定している=福井市内


 足の骨折や心不全が重なった小林香代子さん(88)=福井市=は、病院で寝たきりになった。意識はもうろうとし、流動食をスプーンで口に入れても脇からこぼれ落ちた。病院によると、回復は見込めないとのことだった。

 元気なころ「死ぬなら家で」と言っていた小林さんの願いをかなえようと、息子の雅人さん(60)は昨年2月、母を自宅に連れて帰った。雅人さんは「桜は見られないと思っていた」。診察は在宅医療専門の「オレンジホームケアクリニック」(同市)にお願いした。

 同クリニックは医師の紅谷浩之さん(40)が2011年に立ち上げた。現在は4人の常勤医師らが、小林さんら約240人の自宅に向かい診察にあたっている。多くが高齢者だ。

 自宅に戻って1カ月ほどで小林さんの体調に変化が現れた。流動食だったのが、自分で箸を持ってご飯を食べるようになり、話すこともできるようになった。最近では、セイコガニを1杯平らげた。紅谷さんは「住み慣れた家で家族との時間や生活のリズムを取り戻し、体調が安定したのだと思う」と話す。

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 同クリニックの看取(みと)りの数は年間80〜100人。過去に病院でも高齢者の死を見てきた紅谷さんは「病院と在宅での死は違う」と話す。

 老衰が進むほど、食事や水分補給の量は減っていく。死への準備として自然なことだが、病院は点滴で栄養補給をする。そして患者の体はむくみ、苦しさが増す。紅谷さんはその説明をした上で対応を決める。「病院は人間の死を邪魔してはいないだろうか」と疑問を投げ掛ける紅谷さんには、現在の医療は生老病死の「生」以外を認めないものに映る。

 在宅医療を受けていた60代の男性は「もうオレ(の命)はあと3日だ」と言い、妻と娘と手をつなぎ川の字で寝た。妻には「愛してる、愛してる、愛してる」というラブレターを残した。80代の女性は、子や孫が風船で飾り付けたベッドの上で、家族が歌う歌を聞きながら旅立った。

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 内閣府調査では、自宅で最期を迎えたいと希望する55歳以上の人は54・6%(12年)に上る。一方、厚生労働省によると、死亡場所が自宅なのは全体の12・7%(15年)で、福井県も11・2%にとどまる。

 こうしたギャップを埋めるため、25年の医療の姿を示す県地域医療構想では、在宅医療の充実を掲げる。国も診療報酬を手厚くし、在宅への流れを後押ししている。

 昨年1月、紅谷さんは外来診療を行う「つながるクリニック」を福井市内にオープンした。在宅と外来の二つのクリニックを持つことで、病気を見つけてから亡くなるまで、そして亡くなった後も家族に寄り添える医療を目指す。「本人や家族に病気や老衰について丁寧に説明し、理解を共有すれば、最終的に医療の介入は限りなくゼロに近づいていく」。紅谷さんが描く理想の形だ。

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