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死を招く孤立、家族や地域の絆どこ 第1景・超高齢社会(1)

(2017年2月21日午前7時20分)

拡大 5年前に男性が孤独死したマンションと同じ間取りの部屋。男性は窓側に敷かれた布団の上に横たわっていた=福井市内 5年前に男性が孤独死したマンションと同じ間取りの部屋。男性は窓側に敷かれた布団の上に横たわっていた=福井市内


 5年前、1人暮らしの60代男性は、6畳間の布団の上で死んでいた。白線が入った黒のジャージー姿で、両手を広げて横たわっていた。

 福井市内のマンションの一室。足元の電気ストーブはついたまま。脇には食べさしのミカンが転がり、ポットのお湯は保温になっていた。

 連絡がつかないことを不審に思った知人が部屋に駆け付け、男性は発見された。警察によると、死後数日たっているとのことだった。

 男性は糖尿病を患い、右の足先は壊死(えし)し黒く変色していた。足を引きずりながら大家に家賃を持っていっていたが、次第にできなくなった。

 部屋の台所には小さな鍋が一つ。炊飯器はあったが自炊している様子はなく、カップラーメンが常に何個か置いてあった。

 大家には「医者は『あれ食べたらあかん』『これ食べたらあかん』と言うけど、そんなのどうでもいいんや」と漏らしていた。

 男性は無職で、生活保護を受けていた。遺体は元妻が引き取ったが、ほかに近しい身内がいたかどうか、大家にも分からない。

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 国勢調査によると、福井県内の高齢者(65歳以上)の1人暮らしは2000年には1万4790人だったが、15年は2万7161人と83・6%増。高齢者の8人に1人で、複数の福祉関係者は「孤独死予備軍」と表現する。敦賀市自立促進支援センターの道上江利子さん(53)は「高齢者の孤立は大きな課題」と話す。

 孤立は健康にも影響を与える。閉じこもりの高齢者は非閉じこもりに比べ、歩行障害や認知機能障害の発生危険度が2〜3倍になるとの研究結果もある。東京大高齢社会総合研究機構の村山洋史特任講師(37)は「ボランティアや趣味、習い事に取り組む高齢者ほど、自立した生活を維持しやすい」と指摘する。

 県内の市町では1人暮らしの高齢者に、配食サービスを行っているが、福井市のある民生委員は「自分の部屋を見られるのが嫌で、拒否されることもある」。高齢者自らが社会の扉を閉ざすケースは少なくない。

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 その民生委員にも高齢化の波が押し寄せる。県内1830人の平均年齢は65・5歳で、04年に比べ4・4歳上昇。多くの民生委員は「認知症への声かけや振り込め詐欺防止の普及啓発など、仕事は増える一方。なり手はいなくなる」と口をそろえる。

 村山特任講師は「地域の高齢者福祉は住民の志に頼ってきた。しかしボランティア精神に頼り続けるのは危険。少額であっても継続的に報酬が入る仕組みなどを考えていく必要がある」と強調する。

 社会構造の変化とともに家族や地域の人間関係が崩れ、高齢者が置き去りにされていく。福井市地域包括支援センターの担当者は言う。「向こう三軒両隣の時代は、もう取り戻せないのでしょうか」

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 ある推計によれば、福井県の人口は2040年に63万人になるという。自治体の消滅すら危ぶまれる未曽有の変化は、私たちの暮らしに大きく影響し、新たな価値観を生みだすのだろう。「幸福度日本一」の福井で、この先も幸せに生きるには? 「超高齢社会」や「働き方」などテーマごとに人の営みを追いかけ、その答えを探っていきます。

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