福井県の総合ニュースサイト


全国の速報

福井のニュース  論説

安保法施行へ 議論も国民理解も足りず

(2016年3月26日午前7時05分)

 わが国の安全保障政策の大きな転換点となる同関連法が29日施行される。歴代政権が憲法違反として禁じてきた集団的自衛権の行使を閣議決定で容認。自衛隊の活動が大幅に広がっていく。これで本当に国と国民の安全性が高まるのか。「違憲」論議も含め国会で問題点を十分議論し、国民に説明を尽くすべきだ。

 安保法制の国会審議では昨年6月、憲法審査会で自民党推薦の憲法学者までが集団的自衛権の行使は「違憲」と断じた。戦争放棄と戦力不保持を定めた憲法9条に照らして「認められない」とした歴代政権と同じ立場だ。一度は自民党を慌てさせたが、安倍政権は「成立すれば、理解は広がる」と突き進んだ。

 強引な法制化に反対する市民団体などは廃止を求め集会やデモを続けている。高校生や女性も多く、弁護士グループらによる集団提訴の動きも出ている。

 安保関連法が成立した昨年9月の世論調査では安倍政権が「十分に説明しているとは思わない」は81%に達した。自衛隊が戦争に巻き込まれるリスクは70%近くが「高まる」と感じ、政府対応や強行採決への根強い不満があったはずだ。

 安倍晋三首相は25日の参院予算委で、関連法の意義を重ねて強調。「国民の命と平和な暮らしを守るためには現実を直視し、あらゆる事態に切れ目のない対応ができる法制が必要」として「ベストな法制だ」と断定した。野党5党は廃止法案を衆院に提出しているが意に介さない構えだ。

 確かに北朝鮮の核・ミサイル開発や中国の海洋進出など日本を取り巻く安全保障環境は厳しさを増しているようにみえる。首相の「現実直視」はこうした事態に加え、テロなどが多発する世界の不穏な状況も視野に入れての発言だろう。

 法施行により、防衛の先頭に立つ自衛隊の活動は大幅に拡大する。他国への攻撃が日本の「存立危機事態」に当たると判断すれば集団的自衛権が発動される場合が出てくる。

 また他国軍への後方支援も随時行え、国連平和維持活動(PKO)では、国連職員や非政府組織(NGO)関係者を救出する「駆け付け警護」などが可能となる。当然、危険度は増す。安倍政権は当面、新たな任務の指示を見送る方針のようだ。今夏の参院選での争点化を回避する狙いだろうが、それでよいのか。

 懸念材料はまだある。先の予算委で、横畠裕介内閣法制局長官が、核兵器の使用が憲法違反に当たるかどうかを問われ「必要最小限度」としながら「憲法上あらゆる種類の核兵器の使用がおよそ禁止されているとは考えていない」との見解を表明した。「非核三原則」は厳然たる国是である。

 核戦争に至らなくても、日米同盟の深化による軍事行動が不測の事態に発展する可能性はある。まだまだ議論が不足している。

福井のジャンル

福井新聞ご購読のお申し込み D刊お申し込み

ニュースランキング

弔電サービス「わたっくす」

ぷりん

福井新聞文化センター 風の森倶楽部


[ スマホ版はこちら ]

〒910-8552 福井県福井市大和田2丁目801番地

TEL:0776-57-5111

本ページに掲載の記事・写真などの一切の無断掲載を禁じます。