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高浜原発運転差し止め 事故リスクに厳格な姿勢

(2016年3月10日午前7時25分)

 関西電力高浜原発3、4号機の再稼働差し止めを隣接する滋賀県の住民が申し立てた仮処分について、大津地裁(山本善彦裁判長)は、運転を差し止める決定をした。決定は直ちに効力を持つため、関電は運転中の3号機を停止させる。仮処分決定で稼働中の原発が止まる例は初めて。関電は不服を申し立てる方針だが、緊急停止した4号機も対策を講じても再稼働できず異例の事態だ。

 東京電力福島第1原発事故後、原発の再稼働や運転を禁じた司法判断は3例目となる。しかし、原子力規制委員会の新規制基準の適合性審査に合格し、再稼働した原発に「待った」をかけたのは初のケース。国の原子力行政と規制に与える影響は深刻である。

 申し立てたのは原発から約70キロまでの滋賀県内の住民だ。「過酷事故が起きれば、琵琶湖の汚染で近畿一帯の飲料水に影響が出る」との訴えは、広域に及ぶ原子力災害の問題を浮き彫りにしたともいえる。

 争点は新規制基準の妥当性や審査のあり方、地震・津波対策、過酷事故対策などだった。山本裁判長は「発電の効率性を甚大な災禍と引き換えにはできない」として福島原発事故を踏まえた過酷事故対策や耐震基準策定、津波対策にも疑問が残るとした。避難計画についても、地方自治体の防災対策では不十分で「国家主導での具体的で可視的な避難計画が早急に策定されることが必要だ」と指摘した。言葉は丁寧だが、対策を「全否定」したに等しい。

 高浜3、4号機は昨年4月にも福井地裁が再稼働を差し止める決定を出したが、同年12月に別の裁判長が取り消した。大津地裁では同様の仮処分申し立てに関し2014年11月、山本裁判長が「再稼働は迫っておらず、差し止めの必要性はない」と却下していた。

 このように真逆の判断が出るような状況は異常だ。そのたびに住民や国、電力事業者が振り回される。

 昨年4月の福井地裁決定や15年4月の九州電力川内原発1、2号機の運転差し止め仮処分申し立てでは、専門家の意見を尊重した国に広い裁量権を与えた四国電力伊方原発(愛媛県)行政訴訟の最高裁判決(1992年)を踏襲する姿勢を示した。新規制に一定の評価を与えるものだった。

 4月の福井地裁決定は、新規制の枠組みに合理性を認め、原発の危険性についても「社会通念上、無視できる程度にまで管理されているかどうか」で判断されるべきとした。リスクをどう現実判断するかの視点だ。

 しかし、今回の仮処分決定は、科学的、専門技術的知見を踏まえた安全性の根拠、責任を電力側に求め「主張および疎明が尽くされない場合には、電力会社の判断に不合理な点があることが事実上推認されるものというべきである」と厳格な判断を示した。

 福島原発事故から5年たっても避難住民の帰還ができない状況がある。原発訴訟は住民の波状攻撃のように全国で起き、高浜原発も名古屋高裁金沢支部で抗告審が進行中だ。原発に依拠する政府のエネルギー政策はこのままでよいのか。国の「再稼働ありき」の姿勢が厳しく問われている。

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