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高浜原発再稼働 安全と信頼への道は遠い

(2016年1月30日午前7時30分)

 関西電力高浜原発3号機が再稼働した。県内では同大飯4号機が2013年9月に停止して以来だ。東京電力福島第1原発事故を教訓にした原子力規制委員会の新規制基準に適合、稼働したのは九州電力川内(せんだい)1、2号機に次いで3基目。2月下旬には高浜4号機が、さらに四国電力伊方原発3号機も4月以降に再稼働にこぎつける見込みだ。

 安倍晋三首相が「世界一厳しい」とするわが国の原子力規制は、本当に過酷事故を克服したのか。事故はいまだ収束していない。新基準の審査申請は15原発25基ある。高浜はじめ原発の運転差し止め訴訟は全国で起こされ、「脱原発」のうねりは市民権を得た。政府は原子力行政の方向性を再度明確に示すべきだ。

 原発に関する電力各社の常套句(じょうとうく)は「安全性の向上」と「信頼」である。安全性を際限なく追求し、安定稼働の実績を重ねることが国民の信頼につながる。そういう論法なのだろう。

 規制委は高浜原発の適合審査に2年半かけた。関電は過酷事故対策を大幅に増やし、経費は1千億円を超える。想定する地震の揺れを従来の550ガルから700ガルに引き上げ、防潮堤も海抜8メートルまで高めた。新配備の設備などを使った訓練は千回を超えた。

 これだけ対策を施し、訓練の質を上げても、安全への「信頼」が得られたとは言えない。テロや航空機衝突事故対策は不十分で、事故時に格納容器の破損を防ぐフィルター付きベントも未設置。「想定外の事故は起きうる」との覚悟と備えが求められる。

 福島事故の大きな教訓は住民避難体制である。県は原発から30キロ圏までの避難計画を策定、訓練も実施しているが、県外避難を含め30キロ圏内にある京都や滋賀県との広域合同訓練は一度もない。万一の際には大渋滞が予想され、図上訓練では把握しきれない。

 原発が集中立地する本県は原発の安全監視に力を注いできた。西川知事は国民理解の促進など、国や電力側に対し厳しい取り組みを求めてきた。だが全国でシンポジウムを開く程度で国民理解が深まるのか。エネルギー基本計画で原発依存度を「可能な限り低減させる」とした政府はその工程を曖昧なままに「原発回帰」を鮮明にしている。

 西川知事が国や関電に提示した条件には使用済み燃料の中間貯蔵施設の県外立地がある。関電は20年ごろの確定を約束したが、京都府知事の反発を受け、府内では建設しないとした。これでは他府県が拒否するのは目に見えている。数年後に原発内の貯蔵プールが満杯になる中で、課題先送りになる可能性がある。

 しかも高浜原発3、4号機ともプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を使用する「プルサーマル発電」を新基準施行後、初めて実施する。使用後の処理はどうするのか、国の方針も未定のままだ。

 避難計画には規制委の審査基準や直接の関与もなく、立地自治体の責任だけが重くなる。核燃料サイクルや高レベル核廃棄物の最終処分問題など国の重要政策も停滞している。その一方で電力側は再び増設計画を前面に掲げ始めた。

 国民、県民、地元の不安や疑問に答えるための広範な説明会を政府、規制委、電力事業者、立地県の責任で開くべきではないのか。

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