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不透明な2016年 二極分化これでいいのか

(2016年1月1日午前7時30分)

 「中庸の徳たるや、それ至れるかな」

 孔子が論語の中で賛嘆したとされる「中庸」は儒学の中心概念として尊重されてきた。単なる中間という意味ではない。偏ることなく、すべてに通じて和し、限りなく向上発展を遂げる永遠不変の至徳、と解釈すれば少し分かりやすい。

 しかし、孔子は続けてこうも言う。「民鮮(すくな)きこと久し」。最上の価値が人民の間に乏しくなったことを嘆いている。

 ■中庸の精神どこに■

 孔子の悲嘆はそのまま現代社会に通じるようだ。調和の取れた世界は見る影もなく、過激思想によるテロが頻発する。米ロ関係の悪化や中国の軍拡による海洋進出には危険性が漂い、「反日」と「嫌韓・嫌中」の構図なども気になる。

 秩序回復へ、対立を超え英知を結集できるか、岐路に立つ2016年である。

 昨年「イスラム国」(IS)を名乗る過激派組織が日本人2人を殺害した上、今後もテロの標的にすると警告した。日本が米国主導の有志国連合の一員であるからだ。これに対し、安倍晋三首相は中東外交で過激思想を排した「中庸」を掲げたことに注目したい。

 この言葉はイスラム教の預言者ムハンマドの言行録にもある。5月の主要国首脳会議「伊勢志摩サミット」はテロ対策もテーマとなるだろう。どう中庸を形にするのか。首相のリーダーシップが問われる。

 ■憲法制定から70年■

 「安倍1強」政権下の日本はこの中庸の精神が希薄になってはいないか。首相は保守色の強い国家観で、理念が共通する人材を重用しながら政策を推進する。

 日本の右傾化を懸念する国民は多いが、危惧されるのは民意の二極分化であり対立と分断である。

 安全保障法制では多くの学者らが「憲法違反」と断じた集団的自衛権の行使を可能とする憲法解釈の変更で関連法を成立させた。民意の大勢は「反対」に動いたが、メディアは二極化。安倍政権は異論を封じ、批判的な言論に「中立性」を求め圧力を加えた。

 首相が目指すのは憲法9条を改正し、自衛隊を国防軍とする「強い国」の構築だ。日米安保体制の強化は大統領選を控える米国の世界戦略に巻き込まれ「戦う国」になる懸念がある。

 今年は憲法制定70年の節目に当たる。権力の行使を縛る立憲主義の立場から、主権者たる国民は政治と憲法に向き合いたい。

 政府は経済成長を重視し原発再稼働を促進するが、これも国民世論が二分。米軍普天間飛行場移設問題では沖縄が本土から分断状態にあり、辺野古移設を推進する政府は振興策などで民心の分断を図るかのようだ。

 経済政策アベノミクスは大企業が軸。正規雇用と賃金の向上につながらず、むしろ貧困と格差が拡大しているのではないだろうか。

 ■陰るアベノミクス■

 第2次安倍政権発足から3年。内閣支持率は40%台後半を確保している。しかし、世論調査では景気が良くなったと実感していない割合が73・7%に上った。「1億総活躍社会」を掲げ20年ごろに国内総生産(GDP)600兆円を目指す強気の構えだが、人口減少が日本の体力を奪う。

 夏には18、19歳の若者が加わる参院選がある。17年4月からの消費税再増税対策では、公明党の主張を丸のみし、軽減税率の導入を決定した。環太平洋連携協定(TPP)大筋合意による農業対策では大盤振る舞い。衆参ダブル選も視野に入れた選挙戦略だ。

 4日には通常国会が召集される。安保やTPPの影響、消費税再増税と軽減税率の財源問題など難問が山積する中で、野党の結束力も試されることになる。

 ■福井の方向性探れ■

 昨年3月の北陸新幹線金沢開業は県内観光地などへも波及し、予想以上の経済効果を生んでいる。23年春とされる敦賀までのさらなる開業前倒し、早期の大阪延伸へ向け「若狭ルート」の確定を急ぐべきだ。

 原発は関西電力高浜原発3、4号機が1月下旬から順次再稼働の予定。一方で高速増殖炉もんじゅの行方や廃炉措置、使用済み核燃料の中間貯蔵場所など多くの問題が横たわる。国の政策を厳しく見極めたい。

 持続可能な多極分散型の国土形成が必要なのに「東京一極集中」は解消されそうになく、国の地方創生戦略も実効性が疑わしい。人口減少、少子高齢化が一段と進む本県だ。重要なのは「若者が住み続けたいまち」である。「オール福井」で立ち向かいたい。

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