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繁忙期残業「100時間未満」 過労死リスク下がるのか

(2017年3月19日午前7時30分)

 【論説】現在の労働行政でいう「過労死ライン」は発症前の2〜6カ月で月平均80時間超、1カ月で100時間超の残業を目安としている。政府が長時間労働抑制のために検討していた残業時間の上限規制。焦点だった「繁忙期」の特例について「月100時間未満」で連合と経団連の足並みがそろった。

 過労死ラインぎりぎりの設定で対立が解けていなかったが、連合側は悲願の残業規制の実現を優先、「未満」という曖昧な表現付きで歩み寄った。首をかしげたくなる内容である。「月100時間」はだめでも、「99時間」なら、極端に言えば「99時間59分59秒」であれば合法となる。煮詰めれば労働者の命か企業の競争力か、をかけた重要な攻防。この合意で過労死リスクが下がるとは思えない。

 ■「未満」「以下」の攻防■

 2月の働き方改革実現会議で政府は年間の残業上限を720時間、月平均60時間で提案。連合、経団連とも受け入れに大筋合意した。争点は「繁忙期」の規制に絞られた。政府は1カ月100時間、2カ月なら平均80時間を軸に連合と経団連の議論に委ねた。

 連合の神津里季生会長は「100時間など到底あり得ない」と反発。経団連の榊原定征会長は提案に賛同した上で「実態とかけ離れた規制は企業の競争力を損なう」と連合側に反論。

 その後も、「1秒」の差をめぐる連合の「未満」と経団連の「以下」の議論は平行線をたどり、合意に至ったのは安倍晋三首相のお願いだった。

 規制案は上限が月45時間、年360時間が原則。繁忙期でも上限の年720時間は厳守だ。超えれば罰則がある。政府は3月中にも実行計画を策定し、労働基準法の改正に着手する。

 原則部分で連合、経団連が一致した意義は大きい。必ず合意を守ってほしい。見直しも5年後にこだわる必要はなく、随時検証することを求めたい。

 ■労働者の声届いたか■

 「働く人々の考え方を中心にした改革をしっかり進めていきたい」と述べた安倍首相の意欲に反し、実現会議の労働側代表は連合の神津会長たった1人。労働者の声が反映されにくい布陣に財界や官邸意向をスムーズに通そうとする思惑が透けた。

 日本の労基法は残業規制に緩く、長時間労働がなくならない原因とされてきた。今規制案で上限が明記され、罰則規定も盛られたのは一応前進ではある。過労死ラインとなる厚労省の労災認定目安(月100時間超、2〜6カ月の月平均80時間超)に沿った形の決着だ。

 しかし現実には過労死ラインすれすれの残業を認めることになる。「未満」が付いて矛を収めた神津会長は「月100時間まで働かせることができるというのは誤ったメッセージ」とくぎを刺したが、過労死の遺族の強い反発にどう答えるのか。

 ■実行力と本気度問う■

 「大きくなったら ぼくは博士になりたい そしてドラえもんに出てくるような タイムマシーンにのって お父さんの死んでしまうまえの日に行く そして『仕事に行ったらあかん』ていうんや」―父を過労死で亡くした男児(当時)の詩だ。

 健康問題に日ごろ不安を感じている労働者数はメンタル面15・3%、心疾患6・3%、脳血管疾患で5・3%いる(厚労省15年調査)。決して少なくない数字だ。政府は今回の上限規制でおしまいにしてはならない。さらに縮める努力が必要だ。規制により労働現場に一層のしわ寄せが行くようでは何のための残業規制かわからない。企業もより効率のいい生産性を目指さなければなるまい。

 残業代ゼロ法案と悪評の過労死を誘発しかねない「働かせる改革」も控え、政府の長時間労働抑制がどこを向いているのか批判もある。企業ともども実行力と本気度が問われる「働き方改革」である。

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