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前橋原発訴訟判決 「人災」の指摘受け止めよ

(2017年3月18日午前7時30分)

 【論説】あの原発事故は「人災」―。司法はそう断じた。

 東京電力福島第1原発事故で福島県から群馬県などに避難した住民らが国と東電に計15億円の損害賠償を請求した訴訟の判決で、前橋地裁は双方に過失があったと認め、低額ながら計3855万円の賠償を命じた。

 未曽有の過酷事故を起こした法的責任を明確にし、過失責任を初めて認めた画期的な司法判断だ。同様の集団訴訟は全国で少なくとも20地裁・支部で約30件、原告総数は約1万2千人とされる。今後の訴訟のみならず原発の安全規制のあり方にも影響を与えそうだ。

 訴訟における最大の注目点は、巨大津波の到来を予測できたかだった。

 判決で原道子裁判長は、政府の地震調査研究推進本部が2002年7月にまとめた長期評価で「福島沖を含む日本海溝沿いでマグニチュード8級の津波地震が30年以内に20%程度の確率で発生する」と予測していたことを重視。巨大津波の予見は可能として、東電は対策が遅れたと判断した。国についても、規制権限に基づき東電に結果回避措置を講じさせていれば事故は防げたと指摘した。

 判決はほぼ原告側の主張に沿ったものだ。国と東電は政府の長期評価に関し「専門家の間でも異論があり、科学的知見が確立していなかった」として予見可能性を真っ向から否定した。

 これに対し、判決は長期評価は「地震学者の見解を最大公約数的にまとめたもの」として「考慮すべき合理的なもの」とした。さらに「配電盤などを高台に設置するといった対策を講じていれば、事故は発生しなかった」と指摘した。

 この予見可能性を科学的な知見に基づいて客観的に判断することは難しい。東京地検は巨大津波を予測できなかったとして、刑事告訴された東電の元会長を2度不起訴処分としている。しかし、検察官役の指定弁護士が検察審査会の議決に基づいて業務上過失致死傷罪で強制起訴している。

 判断が割れる中で、万一深刻な事故が起きれば甚大な被害に直面するという事実をどう見据えるかだ。

 「過酷事故は起きない」という「安全神話」の果てに想定外の事故が起きたのではなかったか。炉心溶融で大量の放射性物質を広範に拡散させても、国も東電も責任を問われないのは「文明の矛盾」である。「仮に対策を講じていても、事故は回避できなかった」との反論は首肯できない。

 判決は原発事故の特異性を考慮し、一方的に被害者となる住民に寄り添った判決といえる。国の責任について「補充的なものでなく、東電と同等」と結論付けた点も注目に値する。

 いまだ責任の所在が曖昧なまま賠償や復興が進められ、政府の原発推進姿勢がより鮮明になっている。それに対し、司法の姿勢は原発の運転差し止めを命じる判断を示すなど厳しさを増している。リスクの多い災害列島における原子力行政や原子力規制のあり方を、住民目線で見直す必要性を今判決は突き付けたのだ。

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