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GPS捜査「違法」 秘密運用より人権重視だ

(2017年3月17日午前7時30分)

 【論説】さぞ便利な捜査手法だったのだろう。ひそかに24時間監視できるのだから。最高裁大法廷はそんな公権力によるプライバシー無視の捜査を厳しく断じた。

 裁判所の令状なしに犯罪に関わった疑いのある者の乗用車などに、衛星利用測位システム(GPS)端末を取り付けるやり方を「違法」とする初判断が示された。憲法の精神に基づくまっとうな判断であるが、今後の捜査に大きな影響を与えるのは必至だ。

 判決は大法廷15人全員一致の結論だった。GPS捜査は「個人のプライバシーを侵害し、強制捜査に当たる」として、令状が必要な強制捜査と位置付けた。

 憲法は、刑事手続き上の強制処分には、裁判官の令状が必要と定めている。判決はまさに「令状主義」の原則に沿ったものだ。

 これまでGPS捜査手法が用いられた連続窃盗事件の裁判では、一審の大阪地裁が「重大な違法がある」と関連証拠の不採用を決定。二審大阪高裁は令状が必要かどうかには触れず「重大な違法はなかった」として判断が割れていた。

 福井地裁でも昨年12月、麻薬特例法違反罪などに問われた男の裁判員裁判の判決で「適法」と判断した。最高裁判断は5月の控訴審に影響を与えるだろう。

 GPS捜査は福井のような薬物事件も同様、令状が必要な強制捜査か、尾行や張り込みの延長による令状不要の任意捜査かで激しい法廷対立が続いてきた。

 警察庁は以前から「尾行の補助的な手段」として任意捜査での運用が可能と判断。2006年の全国警察本部向け通達でも誘拐や監禁、連続強盗など「緊急性が高く、他の捜査では追跡が困難である」との運用要件を提示していた。

 さらに、取り調べで明らかにしたり捜査書類に記載したりしないよう「保秘の徹底」を指示。検察にすらGPS端末の使用を知らせなかった例もあった。

 今回の判断は、行動を継続的・網羅的に把握することで交友関係や思想・信条、嗜好(しこう)などの個人情報が集められ、プライバシー侵害となる恐れを重くみたのだ。「捜査の闇」を断じたことを評価したい。

 確かに通常捜査でもプライバシーの侵害を伴うようなケースはある。ただ、GPS捜査の特異性は相手をどこまでも追跡する常時監視が可能なことだ。判決でも「公道上のみならず、プライバシーが強く保護されるべき場所や空間も含め、逐一把握できる」とした。

 もう一つ判決で重要なのは、現行法上の令状による対応には「疑義がある」と否定し、GPS捜査の特性を踏まえた新たな立法措置を促している点である。恣意(しい)的な運用を許さない方策を検討するのは当然だ。

 より実効性のある捜査を進める上で科学技術の進歩は不可欠の要素。捜査ツールはGPSだけでなく、会話傍受やカメラの顔認証システム活用など新技術の導入が進んでいく。判決を機に、適正な捜査のあり方や法整備について国会でしっかり議論するべきだ。

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