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大震災・原発事故6年 復興へ連携、支援が足りぬ

(2017年3月11日午前7時05分)

 【論説】古里に帰れないのか、それとも帰りたくないのか。思いは複雑だ。国民に必要なのは被災者の気持ちに寄り添うことではないか。

 東日本大震災、東京電力福島第1原発事故から6年。公共のインフラ整備が進み、被災地では懸命に復興・再生を目指している。だが、その足取りは重い。
 福井県内にも福島県を中心に90世帯、195人が避難生活を送っている。「いまも福井」なのか「いまや福井人」なのか。3月末で住宅の無償提供が打ち切られる家族もいる。「幸福度日本一」の地で希望を抱き、安心して暮らせる支援と自立のあり方を行政、住民一体で探っていきたい。

 ■いじめに遭う子ら■

 死者、行方不明者合わせ18446人(10日現在)、関連死も3500人を超す。県内外への避難者は徐々に減ったとはいえ約12万3千人に及ぶ。
 とりわけ福島県はまだ8万人近くが避難生活を強いられ、全都道府県に散らばる。いじめに遭う子供たちも少なくない。平和な生活を破壊した原発事故はいまも続いているのだ。

 「東北の復興なくして日本の再生はない」。安倍晋三首相はそう力説し、来春までに災害公営住宅や高台移転の工事が計画の9割以上完了する見通しを示した。鉄道も9割以上復旧、復興は順調に進んでいるとの認識なのか。首相は3年前、2020年東京五輪・パラリンピックへ向け「被災地の復興を加速し、その姿を世界に発信していきたい」と強調した。

 国は11年度からの5年間を「集中復興期間」と位置付けた。さらに16年度以降の5年間を「復興・創生期間」とし、五輪が開催される20年度までに全体で32兆円を投じて復興事業をほぼ終わらせ、復興庁も廃止の方向である。

 ■失われる地域の絆■

 だが、これはあくまで机上のプランにすぎない。被害が大きかった岩手、宮城、福島3県の沿岸部42自治体を対象にしたメディアの調査によると、約4割が20年度までに復興事業が終わる見込みが「ない」と答えた。大半が福島県だ。

 頼みの災害公営住宅は3県で約3万戸になる計画だが、完成済みの2万2438戸の約6%が空き家。空室率4割を超える地区もある。維持管理費が自治体の財政を圧迫し、家賃負担が発生する入居住民も苦しい。

 沿岸部に巨大な防潮堤を建設、生活と海が隔絶された中で、高台に造成された住宅地は空きが目立つ状況にある。失われたコミュニケーション、地域の絆は人口減と高齢化の大波にも洗われる。人手不足が深刻化し、産業の再建もままならない。自治体間の広範な連携、支援が不可欠だ。

 ■事故の収束程遠く■

 政府は、原発事故で全住民避難を余儀なくされた福島県の飯舘村と川俣町、浪江町の一部を3月末に解除する。14年4月以降に解除された楢葉町など5市町村では、住民の帰還率が約13%にとどまるとのデータもある。

 子を持つ親の放射線への健康不安や農作物栽培の困難性、買い物に便利な商店の激減など生活インフラの衰弱は、進む過疎化に拍車を掛けることになる。

 その責任が問われる原発事故の現場では廃炉作業が難航。工程表では21年に溶け落ちた核燃料(デブリ)の取り出しを始め、事故から30〜40年で廃炉作業を完了させる計画だ。しかし、2号機に投入した自走式ロボットは堆積物や高い放射線に阻まれている。想定を超える困難な状況は汚染水対策も同様である。

 問題山積の中でも安倍政権は原発推進の姿勢を堅持する。高速増殖炉原型炉もんじゅ(敦賀市)の廃炉を決定するや、後継の高速炉開発計画までぶち上げた。

 大震災と原発事故から浮かび上がる多くの教訓と課題。国はいったい何を学んだというのだろうか。

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